保管設備決定の留意点:量販センター向けを例として

はじめに

新規の物流センターを設計する場合、機能としてはDC(Distribution Center、在庫保管型センター)とTC(Transfer Center、通過型センター)を分けて検討します。そのうちDCについては、一定の制約条件の中でどのような保管設備(平置き・パレットラック・棚等)でどのくらいの設備数になるのかを試算しなければなりません。

これまで「物流要件定義のポイント」で物流検討に必要なデータについて、「在庫分析手法のご紹介~ABC分析」で保管分析手法について取り上げています。これらのデータをもとに保管設備を決定するにあたってどのような点を留意したらよいのでしょうか。

保管設備は、保管するアイテムの形状や物量、回転率、出荷荷姿などによって保管方法も変わってきます。今回は、在庫品目確定から保管設備決定までの基本的な流れの一例を見ながらその留意点を探っていきます。

在庫品目確定から保管設備決定までの基本的な流れ:量販センター向けを例として

【基本的な流れの一例 図】

在庫品目(量)確定

一般的に在庫の役割は流通段階での「バッファー(余裕)」であり、下記のような機能を持っています。

1).ロット効果(ロット仕入れによる仕入れ原価の削減)
2).予測誤差のカバー(商品安定供給、欠品削減)
3).納期確保(納品リードタイム(納品までの時間)短縮)
4).負荷調整(生産能力に対する負荷の軽減)
5).流通加工、他。

その在庫品目、在庫量は荷主様の在庫戦略により決定されます(在庫戦略決定の主体は荷主様であり、3PL事業者はそのお手伝いやアドバイスを行います)

出荷状況/在庫の分析

在庫する品目が決定されたら、その商品の出荷形状、出荷頻度、出荷ボリューム、入庫量、将来の出荷物量予測、在庫波動(ただし、アイテム別にMAX値を設定すると膨大な量になるので注意)などを分析します。3PL事業者は在庫が確定されてから各アイテム別の物流に必要な分析を行います。

1).商品特性(大きさ、重量など特化した場合等)
2).特売や定番など出荷特性がある商品区分
3).出荷形状(ケース出荷、ボール出荷、単品出荷等)
4).出荷頻度、ロット(週何回発注、1行あたりの出荷量等)
5).出荷波動(年間の出荷量変動や、1ヵ月間内・1週間内の出荷量の変動)
6).将来の出荷ボリューム予測(数年後のMAX値等)
7).保管ロット(アイテム別保管物量)
8).将来の在庫ボリューム想定

保管方法の検討

上記の出荷状況と在庫物量の状況とその他の制約条件や効果などを加味して検討します。

【代表的な保管設備】

ここでの分析は「ABC分析」などを行うと効果的です。出荷頻度の高い/低いという判断はその荷動きから判断します。

例えば、中量棚を使用する場合には、棚に入りきらない商品を一時保管する「バックヤード」が必要となる場合があります。そこからの補充が1日に何度も発生するような商品は「出荷頻度が少ない」には当てはまらず、出荷単位がバラ商品であってもパレットから直接ピッキングを行うことやフローラックを利用したり、棚の間口を広く確保したりして、1回あたりの補充量を増やすなどの工夫が必要になります。

また、管理アイテムの多い/少ないという判断では、全体の規模や業界の一般数値やレイアウトなどをもとに検討します。例えば、100アイテムと一言にいっても300アイテムのうちの100アイテムと1万アイテムのうちの100アイテムでは見方が変わってくるからです。

他に検討しなければならない制約条件や効果については下記のようなものがあります。

1).建物制約、レイアウト
2).拡張性(今後、出荷形態などが変化するか)
3).投資額(投資対効果)
4).作業方法(総量ピッキング、オーダーピッキング)
5).機械出荷能力
6).品質(先入れ先出し等)
7).カテゴリ(納品区分、商品特性等)
8).検討期間

最適な保管方法決定のために(評価、改善、決定)

3PL事業者としては、普段通常に行っているような検討ですが、保管方法の決定というテーマは単純なようで奥深いものです。様々な点を考慮しながら、個々に検討、改善を行い最適な保管方法を目指していくことになります。

センター設計において、保管設備の決定は重要な要素です。大きすぎるセンターを作ってしまって投資額負担が大きくなったり、計画通り保管できず別のセンターを借りることになったりする場合も考えられます。

また、スタート当初は適当な施設であっても、扱い物量や品目、提供するサービスの内容が変化してきたときに柔軟性が無く対応できないという場合も考えられます。設計時にどこまでを想定するのかについては、荷主と3PL事業者が十分議論して、経緯や前提条件を合意の上で計画を進めていくことが必要です。

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(文責:真壁)

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