ロジ・ソリューションの物流コンサルティングのストーリー「雷電工業の物流改革」その2:実装編

(その1:調査編から続く)

 全ての調査が終わったのは6月。最終報告書はパワーポイントで200枚という分量になりました。本編が100枚、資料が100枚という構成です。これを90分ほどの報告会でロジ・ソリューションの3人がプレゼンテーションします。

 5ヶ月をかけて調べてみた結果わかったのは、やはり倉庫に積んである在庫の量が適正と思われる数値を越えているということでした

 特に問題とされたのが仙台倉庫と神戸倉庫です。どちらも取引先が少ない割に在庫量は他の3か所並みとなっているように思われます

 例えば仙台倉庫を今までのような保管型センター(DC: Distribution Center)から通過型センター(TC: Transfer Center)に切り替えて、東北地方向けの在庫そのものは福島工場に集約してしまうことでこれだけのコストダウンが見込めますし、神戸倉庫向けの配送は現在では4トントラックのチャーター便で積載率は30%しかないので、大手物流会社の幹線便に載せてしまう方が安いはずです。

 この他、新しい倉庫管理システム(WMS: Warehouse Management System)や輸配送管理システム(Transport Management System)の導入のメリットも解説されています

 ロジ・ソリューションの物流診断プロジェクトの最終報告が終わったのは、2023年の7月15日でした。最初の問い合わせからちょうど半年後です。福島社長からも「厳しいことを色々言ったが、期待通りの成果を出してもらった。引き続きよろしく」という言葉をいただくことが出来たロジ・ソリューションの三人は、密かに達成感を噛み締めました。

 これで一旦、ロジ・ソリューションの雷電工業コンサルティングは完了となります。

 有名外資コンサルティング会社や一般的な物流コンサルティング会社が提供している物流コンサルティングサービスも、基本的にはここまでです。しかし、ロジ・ソリューションの物流コンサルティングの強みが発揮されるのは、ここから先なのです。

 どういうことでしょうか?

実装まで

 さて、成川部長としては、調査報告を受けて次にどうするかを考えなければなりません。

 ロジ・ソリューションの報告書にはこの後のアクションプランも客観的な立場から提示されています。問題は、それを誰が実装するかです。雷電工業の物流部にはその余力がありません。これだけの規模の会社の物流部門の仕組みを大きく変えるという仕事をした経験のある人材がいないのです。

 取りうる選択肢は二つでした。

 一つは、ロジ・ソリューションが作った報告書を元にもう一度、今度は現場を作り変えるプロジェクトの発注先を探すというもの。物流コンサルティングとは別に、物流センターの立ち上げやシステムの入れ替えを請け負う会社も探せば山のように出てきます。またそういう会社に声をかけてコンペを行うのも、手ではあります。

 もう一つは、ロジ・ソリューションにプランの実装まで任せてしまうというもの。ロジ・ソリューションは物流コンサルティング部門と物流エンジニアリング部門があるとのことで、エンジニアリング部門では有名メーカーや流通大手の物流センター作りを数多くこなしているのだとか。

 成川部長の本音としてはロジ・ソリューションにこのまま次フェイズも発注したいところでした。福島社長も基本的にはそのつもりのようです。一方で、物流部の中には「ロジ・ソリューションさんに頼むと、親会社のサービスで全部揃えられてしまうのでは?」という声があるのも事実です。

 実際はどうなのか。

 成川部長がK部長に電話してみたところ、拍子抜けするほどあっさり「いやあ、親会社だからって特別扱いはしないですよ。ライバル会社のNさんでもSさんでもFさんでも、雷電工業さんにとってベストなものを選びます」と断言されました。

 こうなると、もうロジ・ソリューションを外す理由はありません。5ヶ月間の調査を通して雷電工業の物流のことを知り尽くしているロジ・ソリューションにアクションプランの実行も発注するということで、トントン拍子に話が進み、8月のお盆開けにフェイズ2のキックオフとなりました。

 フェイズ2ではロジ・ソリューションのチームにもう一人、ベテラン社員のGさんが加わっています。Gさんは40代の女性でロジ・ソリューションの親会社の出身。物流センター立ち上げや物流部門の改革プロジェクトの経験が豊富な人物です。

 実装フェイズでまず行うのは、調査フェイズよりも更に精密な各種のシミュレーションです。

 例えば仙台倉庫をDCからTCに作り変えるとすると、これまでは福島工場で午前中に製品を積み込み午後に仙台倉庫に到着していたトラックの運行計画も、夜に積み込みを行って早朝4時台に出発し、10時台には仙台TCに到着するようにしなければ、受注の翌日に取引先に配送することが出来なくなります。

 ですが、本当にこの新しい配車計画が機能するのか、机上の空論になっていないか、2024年4月以降も問題は起こらないか。こうした部分を慎重にシミュレーションしていきます。

 これらのシミュレーションを経て改革後の雷電工業の物流の枠組みが決まったら、次は改革後の協力会社のリストアップ。通常、契約終了は半年前までに通知ということになっているので、改革後にはお仕事をお願いしないことになった協力会社さんには、早めにお知らせしなければいけません。

 それが終わると、いよいよ新しい仕組みの実装が始まります。全てを一気に変えるのではなく、現場とのすり合わせを入念に行いながら、少しずつ、少しずつ仕組みを入れ替えていきます。フェイズ2でチームに加わったGさんの現場経験がものを言う場面です。

 報告会では相変わらず福島社長の厳しいダメ出しが続くのですが、必ず奮起してそれに応えるロジ・ソリューションへの期待の裏返しでもあります。

エピローグ:物流改革は続く

 雷電工業の物流改革フェイズ2が完了したのは2024年の2月末でした。2024年問題対策のタイムリミットである2024年4月1日のちょうど1ヶ月と1日前です。2024年問題を織り込んだ入念なシミュレーションと検証も済ませているので、成川部長は安心して4月を迎えられるはずです。

 ですが、これで雷電工業の物流改革の全てが終わったわけではありません。

 次はWMSとTMSの刷新という課題が控えています。その先には自動倉庫システム(AS/RS: Automated Storage Retrieval System)の導入もあります。もちろん、フェイズ3以降を伴走するのもロジ・ソリューションということになるでしょう。

 ロジ・ソリューションには物流計画策定から現場の改革実装まで、あらゆる課題に対応出来る人材が揃っているのです。