はじめに
Merry Christmas! 561号を担当いたします。釜屋です。
物流業界では、労働力不足やコスト削減の必要性から、保管、荷役、輸送の各工程で自動化が加速しています。例えば自動倉庫やピッキングロボット、無人搬送車(AGV)など、従来は人手で行っていた作業を機械やAI技術によって代替し、効率化を図る取り組みです。また、インターネット通販の増加により、効率的でスピーディな物流が求められる中、自動化技術の重要性はますます高まっています。しかし一方で、導入にあたってのコストや運用面での問題も浮き彫りになっています。本稿では、自動化設備導入における問題点をご紹介します。
初期投資の負担
物流現場の自動化には多額の初期投資がかかります。自動倉庫の設置には数千万円から数億円規模の費用が必要で、特に中小企業にとっては負担が大きくなります。また、自動化技術は装置産業のノウハウに依存しているため、特定のメーカーや技術に頼らざるを得ず、更新や拡張時に柔軟な対応が難しいといった問題もあります。技術の進化が速い中、頻繁な更新やメンテナンスも必要で、維持コストの増大が問題となっています。
複数システムの連携の難しさ
物流全体の効率を高めるには、各工程の自動化だけでなく、それらのシステムがシームレスに連携することが重要です。たとえば、倉庫内の自動倉庫と無人搬送車がスムーズに連携しないと、どちらかの装置に待機時間が発生し、全体の効率が低下します。こうした連携には高度なエンジニアリングが必要で、統合や最適化には機器単体の導入以上に時間とコストがかかります。
賃貸倉庫での施設工事の費用負担
8賃貸倉庫を利用している企業にとっては、施設の改修工事も問題です。自動倉庫や無人搬送車の導入には高出力の電源が必要なことが多く、キュービクル(高圧受電設備)の増設や改造が欠かせません。さらに、テナント契約の倉庫では、退去時に原状回復が求められるため、自動化設備の撤去や復旧工事に多額の費用がかかり、導入ハードルが上がる要因となっています。
人材の再教育と運用の課題
自動化の進展により従業員の業務内容も変わるため、技術に対応するための教育・研修が欠かせません。特に、トラブル発生時の対応や安全管理のノウハウが求められるため、従来とは異なるスキルの習得が必要です。自動化が進むと現場の柔軟性が低下し、急激な荷役作業量の増加などへの対応が機械処理能力の限界に左右されることも問題です。
災害時のリスクと停電の問題
自動化設備は電力供給が必要で、停電や災害時に稼働できない問題があります。自然災害の多い日本では地震や台風による停電リスクが高く、電力が途絶えると自動倉庫や搬送ロボットは停止し、物資の移動や供給が滞ります。停電時のバックアップや災害時にも対応できるマニュアル運用の準備が求められますが、これらにはさらなるコストがかかります。
これらの問題解決に向けて
このように、物流の自動化には期待が寄せられていますが、初期投資を抑えて投資効果を高めること、WMS(倉庫管理システム)および自動化システム間のシステム連携を慎重に構築すること、施設工事に大きな費用がかかることを当初より想定しておくこと、災害リスクへの対応策としてマニュアルを作成しておくことといった課題が山積しています。効率化を実現するには、単なる機器導入にとどまらず、現場に最適な技術の選定、全体エンジニアリングの設計、長期的な施設管理や人材育成が重要です。
(文責:釜屋 大和)
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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第561号 2024年12月25日)