2022年よりシリーズで「コロナ後のグリーンロジスティクスのことを考える」を掲載しています。
「1. 世界の中の日本とドイツの物流指標」、「2. 物流系スタートアップとの共創」では、世界の物流企業が「グリーン成長」と「デジタル化」を戦略とし、そのための手段として様々な投資計画をたて、新しいビジネスを進めている事例を紹介しました。
事業創出が求められる一方、物流全般の見直しも重要視されます。安心安全な貨物の輸送に適した梱包は今まで製造業にとって大きな課題でしたが、そこに効率性、コスト削減、環境への配慮が加わると、梱包素材を開発する産業、保管・配送のための物流企業との協力と物流の見直しが必要となってきます。
本稿では、グリーンロジスティクスを梱包・パッケージの観点から考えてみたいと思います。
商業包装に求められてきたもの
われわれが日常的に手に取る商品個々の包装は商業包装と呼ばれ、物品の保護とデザイン性が主な開発のポイントでした。環境へ配慮するためのリデュース(Reduce)、リユース(Reuse)、リサイクル(Recycle)の3Rが意識されるようになると、梱包材は一般的によく使われているプラスチックから、生分解性プラスチック・バイオマスプラスチック、再生紙に置き換えられていきます。
例えば、農業廃棄物とキノコから作られるキノコ包装、海藻・藻類から作られる寒天包装、可食フィルムなどの事例がドイツのグリーンパッケージ開発でトレンドとなっています。
同時に、販促目的であったデザインは、工業包装同様に、積載・荷役・保管効率・廃材の処理を目的とし、よりロジスティクスに適した形へ変化していきます。
具体例をあげると、強化段ボールは軽くてリサイクルが可能、そして金属や木箱よりも強度や大きさを変えやすい素材です。段ボールの規格を標準化したり、大きく、逆に小さくしたりするなど最適化することで、商品を隙間なく積込むことができ、一回で運べる量が増えます。
アメリカのUPSは2018年から紙およびパッケージ製品の大手メーカーInternational Paperと組み、100%リサイクル可能な段ボールを共同開発し顧客へ提供することで、自社と自社物流を利用する顧客すべてに森林保護支援の付加価値を提供しています。
日本の包装・容器の素材
日本の包装・容器の素材は、段ボールなどの紙・板紙、プラスチック、金属、木に大別できます。
図1から図3は紙・板紙製包装・容器の2018年から2022年までの統計をまとめたものです。紙・板紙は2018年に、すべての出荷金額構成比の約43.5%、出荷数量の65.3%をすでに占めていました。コロナ中2年連続で出荷数量が落ち込みましたが、2022年にはコロナ前よりもそれぞれ増加傾向です(およそ1.8%で3,000億円と1.5%126千トン)。EC物流による小口配送の増加や、価格高騰の影響は少なからずあり、2023年以降にならないと正確な分析はできませんが、環境配慮の結果が、日本でも表れ始めているのかもしれません。
図1-図3: 包装・容器出荷金額と包装・容器出荷量の推移 (2022年日本の包装産業出荷統計より作成)
このように、配達や輸送効率を上げることができ、コスト削減も可能で、なおかつ持続可能な梱包・パッケージの探求は一つの産業、企業だけでは成し遂げられないことは明らかです。
顧客ニーズを満たすためメーカーが物流再構築を決意し、メーカーの目的に適した企画と改善策提案を物流企業が行い、梱包素材企業の開発品を採用する。グリーンロジスティクスの推進には、サプライチェーン全体の協力体制に基づいた物流再構築と商品・荷姿の再設計、デザイン・フォー・ロジスティクス(DFL)を意識することが必要だと思います。
(文責:荒木 なつみ)
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