物流視点から考えるESG経営-1

ESG経営の重要性

近年、ESGという言葉を耳にする機会が増えました。ESGとは、Environment(環境), Social(社会), Governance(企業統治)の頭文字であり、2006年に、当時の国連の事務総長であったコフィー・アナン氏が金融業界に対して投資家の取るべき行動(PRI)として推進したものです。

これ以降、ESGは徐々に世界に浸透していき、「ESG投資」や「ESG経営」という言葉も使われるようになりました。従来の投資は、売上高や利益などの財務情報を重視することが一般的でしたが、評価軸としてESGへの取り組みも重視されるようなりました。そして、企業にとっても「ESG経営」に取り組むことは、重要な指標のひとつとなっています。

本稿では、物流業界におけるESG経営という観点で、まずはEnvironment(環境)の取り組み事例をご紹介します。ここでは、企業がどのように環境に配慮した取り組みを行っているかが評価されます。

物流におけるESG

物流における環境に対する取り組みとしては、以下のものが挙げられます。

  • 物流拠点における電力使用量の削減
    • 物流拠点で使用している照明をLEDに切り替える
      •  LEDの消費電力は白熱電球の約20%、蛍光灯の約30%、水銀灯の約25%と言われています。まずは現在使用している照明の種類を確認し、LED照明への切り替えを進めていくことが必要です。
    • 太陽光発電システムを設置する
      • 太陽の光を電気へ変換するので、発電時にCO2を排出することがありません。太陽光の設置には大きな初期投資はかかりますが、近年では、屋根や敷地を第三者の電気事業者に提供し、そこから使用した分の費用を支払うPPA(Power Purchase Agreement)というビジネスモデルなども増えています。
  • トラックCO2排出量の削減
    • モーダルシフトを進める
      • モーダルシフトとは、トラック等の自動車で行われている貨物輸送を環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へと転換することです。1トンの貨物を1km運ぶ(=1トンキロメートル)際のCO2排出量をみると、トラック(営業用貨物車)が216gであるのに対し、鉄道は20g(約1/11)、船舶は43g(約1/5)とかなり少ないことがわかります。貨物輸送の方法を転換することで、鉄道利用では91%、船舶利用なら80%もCO2排出量を削減することができます。
    • 配送の効率化を図る
      • 納品日の見直しを行うことも効果的です。多頻度小ロットの配送ではなく、なるべく荷量をまとめて一度に多くの荷物を運ぶことで、CO2排出量を抑えることができます。また、配送ルートの見直しや共同配送の実現なども有効な手段です。ただし、配送の効率化は、納品先との兼ね合いや他社との積み合わせなど、自社の努力だけでは改善が難しいケースも多いのが現実です。このような課題を解消するために、国土交通省と環境省が連携し、「※共同輸配送促進に向けたマッチングの仕組みに関する検討会」を開催するなど、国を挙げて問題に取り組んでいます。

今回紹介した取り組み事例の他にも、様々な取り組みが行われています。取り扱う商品や荷姿によって最適な改善施策は異なるため、自社のビジネスモデルに適した取り組みを考えることが重要となります。まずは身近でできることから始めてみてはいかがでしょうか。
次回は、ESGのSocial(社会) と Governance(企業統治)についてご紹介いたします。

(文責:益田 善綱)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第514号 2023年9月27日)

★掲載された記事の内容を許可なく転載することはご遠慮ください。

ロジ・ソリューションでは、物流業界におけるESG経営に関するいろいろなご支援をさせていただいております。何かお困りのことがありましたらぜひお声掛けください。(お問い合わせはこちら

※共同輸配送促進に向けたマッチングの仕組みに関する検討会