カーボン・オフセットと物流

カーボン・オフセット引越輸送が始まる

「2013年2月21日、佐川引越センター株式会社から社名を変更したSGムービング株式会社が、新サービスとして、カーボン・オフセット引越輸送の提供を開始。」

先日Yahoo!JAPANニュースにて、このような記事を見つけました。

これは、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資する事等により、引越しで排出される温室効果ガスを埋め合わ せるというものです。投資する削減活動は、今回は岩手県の「釜石地方森林組合」等で、オフセットに掛かる費用は全て同社が負担し、利用者は環境負荷低減だけでなく、復興支援にも寄与する事が出来る商品との事です。

地球全体の課題である地球温暖化対策は企業・家庭を問わず、考えなければならないことです。そこで今回は、その対策の一つである「カーボン・オフセット」について紹介したいと思います。

まずカーボン・オフセットとは環境省の定義によると、「日常生活や経済活動において避けることができないCO2等の温室効果ガスの排出について、まずできるだけ排出量が減るように削減努力を行い、どうしても排出される温室効果ガスについて、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせるという考え」とあります。

以上の定義より、企業がカーボン・オフセットに取り組むには、排出量を「知る」「減らす」「埋め合わせる」の3ステップが必要です。3ステップ目の「埋め合わせる」を行うには、他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量を購入する必要があります。この排出削減・吸収量をクレジットと言い、クレジットには京都議定書に基づく京都メカニズムクレジット(CER、ERU等)や、国内のCO2排出削減・吸収プロジェクトから創出されるJ-VER等があります。

B2Bビジネスの取り組みの遅れ

カーボン・オフセット商品を開発するには、まず商品・サービス・イベント等何をクレジット付きにするかを決めます。次にCO2排出量を算定する範囲を決め、CO2排出量を算定します。そしてクレジットに何を使うか、どこから購入するか、どうPRするかを決め、認証機関から認証を受け商品化されます。カーボン・オフセットは、BtoB・BtoCをメインとしている企業関係なく可能な取り組みとなっています。

身近なカーボン・オフセット商品として、“カーボン・オフセットはがき”をご存知の方も多いのではないでしょうか。2008年から2012年の京都議定書第一約束期間に、クレジットを個人レベルで活用する事を目的に発売されました。

このはがきの仕組みは、消費者がはがきを1枚購入すると、消費者が支払った代金から1枚当たり5円、郵便事業株式会社から5円の計10円をクレジットの取得等に充当するものです。そのため消費者はカーボン・オフセットはがきを購入する事で、地球温暖化防止活動に参加した事になります。

本商品は1枚55円と、一般的なはがきより5円高価でありながらも、2008年から2011年の4年間で約5,800万枚販売されました。償却・無効化した二酸化炭素は15万9,332トンにあたり、家庭部門からの二酸化炭素排出量2,030kg/人(2009年度)より、およそ7万8,500人分に当ります。

50円の普通はがきがある中で、環境活動が出来るものの5円高いカーボン・オフセットはがきが売れた背景には、商品周知と消費者の環境意識の高まりという2つの相乗作用によるところもあったのではないでしょうか。

これは、消費者の環境意識が高まる昨今、SGムービング株式会社がカーボン・オフセットを用いた新たな輸送サービスに乗り出せる一つの要因でもあると思います。

カーボン・オフセットの事例件数は、2007年12月から2012年3月までで累計1,150件ほどと推定されています。そのうち最も多い業種は全体の約30%を占める製造業です。一方、運輸業はわずか4%程度です。カーボン・オフセットはBtoB・BtoCをメインとしている企業関係なく取り組み可能であるものの、前述のカーボン・オフセットはがきが売れた背景にもある通り、消質者意識が関係している事から、運輸業の事例件数の低さが考えられます。これは、BtoCではなくBtoBをメインとしている物流企業がカーボン・オフセットに取り組んでも、その情報は消費者の目には留まらないため、物流費低減を目指す荷主にとってメリットになりにくいからです。

その様な事から、運輸業特にBtoBをメインとしている物流企業がカーボン・オフセットを活用するのは、簡単な話ではなく、活用する一つの案として、BtoCをメインとしている製造業の荷主に対しカーボン・オフセットの導入を勧め、間接的にカーボン・オフセットを活用するという形もあるかもしれません。

今回紹介したカーボン・オフセットはあくまで一つの環境対策の手段ですが、環境負荷低減を意識する荷主に対し、消費者意識を常に的確に捉え、積極的に対策手段・制度の活用を行っていく必要があるのではないでしょうか。そこに物流企業としての、一つの差別化でありセールスポイントがあるように思います。

(文責:西尾)

【参考】
・Yahoo! JAPANニュース 2月13日(水)10時0分配信
佐川引越センターが社名変更、「カーボンオフセット引越輸送」を提供
・カーボン・オフセット活用ガイドブック 環境省発行
・環境省ホームページ ・SGムービング株式会社ホームページ

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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第207号 2013年3月15日)

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