日本におけるサードパーティ・ロジスティクスの進化:五つの論点

総合物流施策大綱と3PL

2021年11月に流通経済大学の物流問題研究 71号に掲載されました論文から、サードパーティ・ロジスティクスについて取り上げます。(詳しくはこちら)

サードパーティ・ロジスティクス(以降3PLと略す)は、荷主にとって物流部門が行っている定常的な業務や管理・改善業務を3PL事業者とともに行うことで、最適体制の維持や高度化と戦略立案や実行の強化がねらいです。日本に紹介されてから20年以上も経過し、いろいろな形に進化している3PLですが、近年のロジスティクスを取り巻く環境の変化は、ここにも大きな影響を与えています。

2021年6月に閣議決定された総合物流施策大綱においては、現在の物流を取り巻く環境変化として次の点が取り上げられています。

・人口減少の本格化や労働力不足への対応
・Society5.0 の実現によるデジタル化・イノベーションの強化
・新型コロナウイルス感染症への対応
・災害の激甚化・頻発化と国民の安全・安心の確保
・地球環境の持続可能性の確保やSDGsへの対応

これに対して、3PLという業態も対応や変化が求められ、進化すべき方向が見えてくると考えています。

人口減少の本格化や労働力不足への対応

3PLはこのような状況下で、できるだけ物流コストをアップさせない施策の立案や実行が求められています。単価の上昇は避けられないため、施策としては、ムダな物流をしない施策や効率的な仕組みの導入が考えられます。そのためにはシミュレーション技術などを活用して、最適な輸配送ネットワークを設計し、運用していくなど専門的な能力が今まで以上に求められています。

Society5.0 の実現によるデジタル化・イノベーションの強化

技術革新のスピードが速くなり、ロジスティクスにもいろいろな面で応用されてきています。このような状況下において、3PLは今まで以上に新技術・新システムの動向をタイムリーに把握し、業務への導入や応用を継続的に企画し推進することや資金的なサポートするなど業務範囲の拡大が求められています。

新型コロナウイルス感染症への対応

荷主が思い通りに調達や販売ができない状況下で事業を継続するため、柔軟な取引関係の構築や最適な取引先の選定を行う動きがあります。これにより、サプライチェーン・マネジメントから、サプライネットワーク・マネジメントへさらに範囲を広げる動きが今後進むと考えられます。これに対して3PLは、これらに柔軟に対応して荷主とともに最適体制を維持することが重要であり、今まで以上に幅広い提案力や実行力が求められてきます。

災害の激甚化・頻発化と国民の安全・安心の確保

日本でも異常気象による災害も各地で発生し、サプライチェーンの分断が起こっていることから、事業継続計画 (Business Continuity Plan 、BCP)の策定が求められています。荷主のBCPには物流も含まれ、関連する物流事業者も対応を迫られます。3PLは、BCPの知識を持ち、顧客のBCP策定プロジェクトを支援する力が求められてきています。

地球環境の持続可能性の確保やSDGsへの対応

SDGsの目標に向かって活動する企業において、今までの財務的視点とは別に環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったESGと呼ばれる非財務的視点の活動に注目が集まっています。サプライチェーンの重要な役割を担う3PLは、その実務においてSDGsやESGを意識した顧客からの要求にこたえる必要も加わってきています。

以上のように、3PLは今までの業務に加えて、将来を予測して施策の先取りをしていくことが求められていますが、そのために今まで以上にロジスティクスの分野における活動の深さと幅を広げていくことが必要となっています。すなわち3PLには、取り巻く環境変化に対応した進化が求められているということであり、同時にその対応のための実力アップが喫緊の課題と考えられます。

(文責 中谷祐治

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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第475号 2022年3月23日)