物流コンペの心構え
「物流コンペ」のコンペは「Competition」の略語です。
「競争」という意味ですが、単なる価格のたたき合いではなく、実現可能な提案内容の競争でなくてはなりません。
まず物流事業者に提案依頼をしなければなりませんが、依頼項目をまとめたものがRFP(Request For Proposal):提案依頼書となります。レベルの高い、価値のある提案を引き出すためには、「提案してもらいたいポイント」をRFPに明記する必要があります。
RFPを物流事業者に配布後コンペはスタートしますが、よほどの理由がない限り途中で止めるわけにはいきません。提案する側にとって提案書作成は営業の一環ではありますが、実際は相当なコストがかかっています。中止になった場合にはその活動自体がムダになってしまいます。また、提案を依頼する側にとってもコストとパワーをかけています。
スタートしたものの、ステークホルダーとの調整ができていなくてスケジュールが大きくずれたケースや、コンペが取り止めになることがありますが、それは双方にとって不幸なことになります。
RFIをうまく使う
本格的な提案依頼の前に、RFI(Request For Information):情報提供依頼という手段を用いる場合があります。
物流コンペは、大きく「社内準備期間」、「提案依頼先絞込期間」、「パートナー選定期間」の3つの期間に分けられますが、RFIは「提案依頼先絞込期間」に実施して物流事業者の情報を入手することを目的にしています。自社の3PL委託方針に合致した事業者の絞り込みを行ってからRFPを配布することにより、提案する側、選択する側双方の負担を減らすことが可能となります。
例えば小売量販チェーンの物流をアウトソーシングする先として、メーカー物流に特色のある事業者は提案依頼先には合わず、情報システム強化をしたいが倉庫管理システム(WMS:Warehouse Management System)さえも保有していない物流事業者はRFP配布先に選ぶべきではありません。
どのような観点で提案を評価するのか
十分な準備期間を経て、RFPを物流事業者に配布して、各社から満足する提案を受けた後に待っているのが最終判断です。
複数社からすばらしい提案を受けたとしても、最終的に1社を選定しなければなりません。物流アウトソーシング先を選定するのは経営にとっては大きなリスクにもなりかねないですし、なぜその事業者を選んだのかをロジカルにしておく必要があります。
事業範囲は合致しているか、安全・品質を重要視しているか、改善能力はあるのか、本気で仕事を取りに来ているのか、情報システムを活用しているのか、教育体制はきちんとしているのか、料金レベルはどうなのか、日常的なコミュニケーションが取れる体制はどうなのか、サービス対応力はあるのか、これまでの取引実績はあるのか、などの観点で評価を行います。
評価項目については、RFPの主旨によって異なるので、全てがこのパターンにあてはまることはありません。項目ごとのウエイト(重要度)についてはプロジェクトメンバーで話し合い、決定し、評価はメンバー全員で行うことをお勧めします。
最後に
公平な目で物流事業者を選定していく際に、忘れてはいけないことを最後に述べます。
スマート物流、ロジスティクス4.0など目新しい言葉が出てきている物流業界ですが、物流自体はまだまだ労働集約型産業であり、荷主と物流事業者、物流事業者と従業員のリレーションの良し悪しにより、物流品質などが決まります。
筆者が最も重要と考えるのは、評価表では表現できない「相性」です。
「契約書以外のことはしません、でも契約書で結んだ内容について履行できなかった場合にはペナルティを受け入れます」というタイプの物流事業者が良いのか、「そこまでお願いされたのだったら、契約外ですけど少しならやりますよ」という方が良いのかの好みの違いも考慮すべきです。
パートナーとして相性をきちんと見極めることも物流事業者選定において重要となります。
(文責:釜屋 大和)
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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第396号 2018年12月19日)