以前に、サービスの範囲と内容を決めることが必要だと述べました。
今回はもう少し考えてみましょう。
配送に行くと搬入までやらされてしまう
ある物流会社の配送車が小売店に配送に行きました。
「こんにちは、〇〇物流です。荷物をお届けに参りました。」
「じゃ、悪いけど2Fまであげてくれる?」
「わかりました(・・・またか。時間がかかるなぁ。ほかのお客さんはトラックの横で良いのに)」
こんな光景があるのではないでしょうか?
このように、違うサービスを提供していながら、同じ料金でやっていることが多いでしょう。
これは商品規格についての曖昧さが生んだ結果だと考えています。
商品規格とはいったいなんでしょうか。
たとえばパーソナルコンピューターは、メモリの容量やハードディスクの容量などの仕様がカタログに明記されています。そして、販売店の中には、複数のメーカーのPCを並べて、価格のタグにその仕様を比較しやすいように書いてあるところもあります。消費者は自分の利用する目的に合わせて、必要な仕様と価格を比較しながら購入していると思います。
では物流サービスではどうでしょうか。
宅配便や引越サービスは比較的明確になりつつあるように思いますが、消費者が直接購入するサービス以外ではまだまだ曖昧といわざるを得ません。その結果冒頭のような光景が繰り返されるわけです。
物流サービスの規格を考える
物流サービスの規格を考えてみましょう。
輸送サービスなら受注、車両手配、運行指示、積込、輸送、取卸、受領、報告、精算といった作業の段階があります。この中で3PL事業者と荷主は、必要に応じてサービス内容を決めていく必要があると思います。
たとえば、受注なら「受注時間帯」「受注タイミング」「受注方法」「受注枠」「受注時確認項目」などを決めるべきです。
たとえば、
- 受注時間帯:9:00-18:00、受注タイミング:埼玉、千葉、東京、神奈川県向けのオーダーは配送日前日の15:00まで、受注方法:電子データ交換、受注枠:1日4トン車30台(それを超える場合は3日前までに連絡の上調整を実施する)
- 受注時確認項目は、発着時間・発着場所・輸送製品・物量・オーダー番号・車種指定の有無・高速道路利用の有無・特殊作業の有無等などです。
こんなに杓子定規に物流の世界は行かないよという話が必ず出てきます。
物流事業者は現在でも締切時間を超えてもできるだけオーダーはすべて消化していこうとがんばっています。
しかしながら、それとは別に時間帯別のオーダー件数を統計的に捕らえることが必要です。そして、当初決めたサービス範囲を超えているが努力している比率を示して、荷主とサービス範囲の見直しをするのです。当初決めたサービス範囲になるように双方でどう改善していくのか、もしくは改善の余地がないのなら料金の見直しを検討するわけです。サービスの対価としての料金ですから、当初決めた以上のサービスに対して料金がかかるのは当然だからです。(その他の要素は別にして、この点だけを考えた場合です。)
一方荷主側は、無料でサービスを受けられているような錯覚に陥るため、このような線引きをしたくないかもしれません。しかしコストはどこかでかかっていてそれが目に見えていないだけです。
冒頭の例ですと、配送コストは荷主から見れば同じかもしれませんが、このようなサービスの範囲を明確にすると、トラックのそばに荷物を取卸して終わる場合と2Fまで持ってあがる場合は配送コストがかわってきます。顧客別のコストや利益率管理に利用できるのをはじめとして、すべてがトラックのそばに取卸すことが前提なら、より効率的な配送をすることが可能になり、コストダウンにつながるからです。
以上のようにドンブリ勘定では細かい管理や改善につなげることが難しいのです。
実装に際しての問題点は
このようなことを進めようとした場合問題になるのは、当初のサービス範囲の取り決めが曖昧なため細かいところまで突っ込んでいけないということがあるでしょう。これは、まず考え方を双方で理解しあい、サービス範囲を決めることから地道にはじめるしかないと思います。新しい取引の場合は、その基本型を作っておいて、そこから決めていくという方法があります。物流業務は2つと同じものはありませんので、それぞれの形に合わせていく必要があります。
アメリカの物流事業者の中には、営業担当の仕事はこのような商品規格を作ることだという会社もあります。
このような規格と価格が明確になっていけば、価格競争だけではなく商品(物流サービス)のコストパフォーマンス(=価格性能比)で競争する時代になっていくのではないでしょうか。そのような時代になるにつれて問題になるのは、どのようなことを明記すべきなのか、どのように競争をすべきかということです。物流サービスに同じものはありませんので、大変難しい問題です。しかし、比較的定型的なサービス(宅配便、特積み輸送、引越、チャーター輸送など)から項目を明記し、比較していくことがよりよい物流サービスが提供される社会への第一歩だと考えています。
よくあることですが、「品質事故ゼロです」という3PL/物流事業者があります。しかしながら、これらはあくまでも目標であって、残念ながらいつもゼロのはずがありません。それなら逆に正しい実態を伝える意味からも、「品質事故はオーダーあたり、X%以下です。」ということのほうが荷主から見ても現実的ではないでしょうか。そして、その水準を保証し、更なる改善でその低下を図り、万一達成できなかったときのペナルティまでつければ、3PL事業者としての信頼は高まるでしょう。
商品規格は、荷主にとっては持ちつ持たれつでうまく運用している現在の関係をより高度にしていくためのものとして理解していくことが必要だと思いますし、物流事業者にとっては高度成長時代からの「待ち」「受身」の考え方を変えることで真の3PL事業者と基礎となるものではないかと思います。3PL事業者として、この点を明確にしていくことが「荷主のパートナーとして改善を行う」というキーワードの実践となります。
御社の物流サービスの範囲と内容は明確ですか?
(文責:中谷)
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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン・ばんばん通信特別号 第11号 2009年5月25日 担当:中谷 祐治)