3PLのさらなる進化
2023年12月に「物流の教科書7 新3PL時代の幕開け」と題しまして、3PLの新しい役割についての考え方をご説明いたしました。今回は、3PL(サードパーティ・ロジスティクス、Third Party Logistics)のさらなる進化について取り上げたいと思います。
3PLという言葉は、1997年の総合物流施策大綱に初めて登場し、その後2005年の総合物流施策大綱では加筆されたものが発表されており、「荷主企業に代わって、最も効率的な物流戦略の企画立案や物流システムの構築の提案を行い、かつ、それを包括的に受託し、実行すること。荷主でもない、単なる運送事業者でもない、第三者として、アウトソーシング化の流れの中で物流部門を代行し、高度の物流サービスを提供すること。」と定義されています。そこに5つの面から3PLの新しい役割について取り上げた内容が前回でした。
3PLは、「荷主物流部門の代行」であることが重要ですが、その荷主の物流部門の一員としてロジスティクスに関与していくことが、その本来の名称から求められていました。しかしながら、物流部自体が生産や販売などの部門と対等に話ができる企業が多くはないため、3PLは物流を中心にいろいろな改革や改善を進めていく支援をしていたのが実態と考えられます。ところが「物流の2024年問題」では、物流問題を解決するために荷主や社会が変わる必要があると考えられ、その施策が打ち出されています。その一つが、「物流統括管理者」の任命です。物流統括管理者の役割としては、中長期計画の作成、トラックドライバーの負荷低減と輸送される物資のトラックへの過度の集中を是正するための事業運営方針の作成と事業管理体制の整備、その他トラックドライバーの運送・荷役等の効率化のために必要な業務を行うものとされています。これは、3PLにとっても大きな意味を持つものと考えられます。
物流統括管理者は2026年度に設置が義務付けられる
その「物流統括管理者」は、2026年度に経営に関与する立場としての設置が義務付けられることとなっており、その数は荷主企業で約3,200社といわれています。企業間のいろいろな施策の推進を考えると、設置が必須でない企業においても同様の役職者を設置し、効率的な施策を他社と連携しながら推進することが求められます。そう考えると、想定以上の物流統括管理者が2026年度までには誕生することとなります。また、新たに任命された物流統括管理者全員が物流の知見があるとは限りませんし、知見があっても施策推進にかける工数が不足している場合も考えられます。
3PLは、今まで物流部門の一部を代行することからロジスティクスの改革を進めようとしていましたが、これからはそれに加え、物流統括管理者の業務をサポートし、本来の名称でもあるロジスティクスの改革を支援する役割も担うことが求められると考えられます。
3PLがこのニーズに応えるためには、今までの物流に関連した企画・管理・改善だけではなく、物流を中心に生産や販売を含めたロジスティクス全体に関する今までより幅の広い知識と実行力が必要となります。見方を変えれば、いままで物流の側面からしかできなかったことが幅広くできるようになり、その実力を発揮する場が広がったといえます。
つまり、3PLには、「物流部の支援」と「物流統括管理者への支援」の2つの側面を持つことが求められる時代が到来したということです。これは大きな変化ですから、産業革命になぞって表現すれば、3PL 2.0時代が到来したといえると思います。
(文責:中谷 祐治)
参考
中谷祐治(2020) 「基本がわかる実践できる 物流(ロジスティクス)の基本教科書」日本能率協会マネジメントセンター
中谷祐治(2015) 「間違いだらけの物流業務委託」日刊工業新聞社
国土交通省 総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)
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