配送システムとAI:これまでの配送経路計算システムと何が違うのか

AI配車システムとは

最近では配車実務にAI配車システムを利用するケースが増えてきています。弊社のグループ会社のセンコー株式会社においても、積極的にAI配車システムの導入に取り組んでいます。以前から物流ITとして配送経路計算システムは存在していましたが、それとAI配車システムはどこが異なるのでしょうか。

人工知能を「“人工:工学的に開発されたもの”を用いて、“知能:インプットに対してそれを自動で処理(計算など)をし、何かしらをアウトプットするもの”」とすると、電卓やスマホアプリについてもAIと呼ぶことができます。現状のAI配車システムはこの定義に近いものと考えられます。

AI配車システムは、「開発されたアプリケーション」が「オーダー情報を自動処理して配送経路をアウトプットするもの」であり、20年ほど前に筆者が日本IBMで営業販売していたVRP(Vehicle Routing Planner)と変わりないと考えられます。

VRPは最適化問題に対するアルゴリズムを用いて、最適化されたルートを求めるものであり、当時はAIという言葉はありませんでしたが、以前から存在していた配車経路計算システムもAI配車システムと言えるのではないでしょうか。AIという言葉により敷居が高いように感じますが、単純化して「配送経路計算システムがAI配車システム」と考えても良さそうです。

計算能力の向上

ただここ数年でテクノロジーが進展しており、計算能力が格段に向上しています。

最近では機械学習型のAI配車システムの実用化に向けた取り組みの話題も聞きます。複数の配送オーダーを方面別車両別などに分けていく処理を、配車担当者の過去の配車結果を学習して自動的に行うことがあります。「人間っぽい動きをする」という意味合いで“人間のような知能”とも呼べなくもないです。しかしながら人間が行った行為を学習しているだけであり、コスト(車両台数、走行時間の最小化)、サービスレベル(納品指定時間の遵守)、環境(走行距離)などにとって最適な配車なのかは考えなければなりません

AI配車システムによってこれまでのルート組みが変更になる場合、ドライバーが慣れ親しんだルートから変わることへの不安や不満、特定のドライバーに多くの負荷がかかる可能性があることへの不満、配送実績による給与制のドライバー(例えば2運行手当、納品軒数に応じた手当など)の不満などが発生します

AI配車システムの限界は指示する相手が全体最適を目的とする存在、個別の不満に対応するロジックが組めないところにあります。完全な自動配車を目指すのではなく、AI配車システムの強みが活かせる配車プロセスに適応させるというのが正解だと考えます。

【参考文献】
流通経済大学 物流問題研究No.69 松室 伊織
『トラック運送の配車業務への自動配車システムの適合性と有効性に関する一考察』

(文責:釜屋大和)

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