事件番号大阪地裁平成16年(ワ)第11732号
事件番号大阪地裁平成16年(ワ)第11732号では、以下のように判決しています。
「原告(F社の元従業員)は、時間外労働時間が恒常的に1ヶ月当たり100時間を超える状態になっており、頻繁に健康診断個人票の提出を求められていたにもかかわらず、班長らの助言・指導に全く従わなかったのであるから、このような状況の下でF社が原告に対する安全配慮義務を履行するためには、単に原告に対して残業しないよう指導・助言するだけではもはや十分ではなく、端的にこれ以上の残業を禁止する旨を明示した強い指導・助言を行うべきであり、それでも原告が応じない場合、最終的には業務命令として、遅れて出社してきた原告の会社構内への入館を禁じ、あるいは一定の時間が経過した以降は帰宅すべき旨命令するなどの方法を選択することも念頭に置いて、原告が長時間労働をすることを防止する必要があったというべきである。したがって、F社が原告の長時間労働を防止するため必要な措置を講じたということはできない。」
『働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律』が2019年4月に施行され、残業については管理者のみなさまはこれまで以上に注意されているものと思いますが、具体的にどのようにしていますか? 従業員のみなさまにどのようにお話されていますか?
時には残業を禁止するような命令や措置をすることも必要
先に紹介しました事件では、注意の対象となる従業員の特性に鑑みてはいるものの、「残業しないようにしましょう」というだけでは不十分であり、「今日は以降の残業を禁止します」という命令でなければならないと判決しています。
私も物流現場で勤めていた際、従業員のみなさまが強い責任感を持って働いていることを感じ、私自身も多くを学びました。他方において、時にはそれが原因で不幸にも心身の不健康に至ることも起こりえます。
管理者のみなさまは“従業員の責任感を十分に発揮していただきたい”心持ちであると思いますが、残業削減の注意喚起や残業の多い従業員の業務の補助、他の者への業務振替など行うことは重要であるものの不十分であり、時には残業を禁止するような命令や措置をすることも必要であるということを、それが従業員やそのご家族にとって極めて重要であることを改めて考えていただきたく思います。
(文責:松室 伊織)
【参考資料】
・「労働判例に学ぶトラック運送業の労務管理」(岡崎隆彦 産労総合研究所・経営書院 2019年8月23日)
・女性就業支援全国展開事業「女性就業支援バックアップナビ」https://joseishugyo.mhlw.go.jp/joho/data/20090626110649.html
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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第427号 2020年4月8日)