あなたの知らない(?)フェリーの世界~海上輸送を利用するメリット~

実はフェリーの売上の8割は貨物

543号を担当いたします榊です。

 突然ですが、皆様旅はお好きでしょうか? 私は大の旅好きでして、その中でも特に船旅が好きです。船のデッキから眺める一面の大海原は、筆舌に尽くしがたい美しさでして、日常の悩みもすべて飲み込んでくれるほどです。比較的安価に非日常を味わうことができますので、もし機会がありましたら是非一度ご乗船いただきたいです。

 乗船前のフェリー乗り場へ行くと、乗用車に加え、シャシーやトラック、時には自衛隊師団の車両や輸送中の電車など、さまざまな乗り物が車両甲板へ積載されていく様子を垣間見ることができます。旅客輸送のイメージが強いフェリーですが、実は1航海の売り上げの8割ほどが貨物部門だといわれています。

本稿では、そのようなフェリーを国内貨物の輸送で利用するメリットについて述べたいと思います。

物流の2024年問題対応

 物流の2024年問題につきましては皆様ご存じかと存じますが、その解決の一矢を担うのがフェリーをはじめとする海上輸送になります。有人航送(ドライバーがフェリーに乗船)の場合、トラック運転者の改善基準告知に「フェリーの乗船時間は原則として休息期間として取り扱うものとなる」とあるように、船内で休息をとってもらうことができますし、無人航送の場合は、陸送での長距離輸送を無人に置き換えることが可能となり、効率化・省力化を実現できるでしょう。

環境問題への対応

 近年地球温暖化問題が叫ばれておりますが、最も影響が大きいガスがCO2だと言われています。CO2排出削減を物流の面から考えてみますと、やはりモーダルシフトの推進が重要になってくるでしょう。モーダルシフトにつきましては読者の皆様はご存じだと存じますが、1トンの貨物を1キロ運ぶときに排出されるCO2を自動車と船舶で比べてみますと、船舶は自動車に比べ5分の1ほどの排出量しかありません。国土交通省管轄の「モーダルシフト等推進事業」に代表される行政からの支援制度も存在しますので、これらの制度の活用も有効です。

ドライバー負担軽減

 フェリーには旅客輸送の役割もあるため、船内設備が充実しています。フェリーといえば雑魚寝のイメージを持たれているかもしれませんが、最新の船舶は個室が多くなっています。ドライバー専用の個室もあるため、プライベートを確保しながら休息をとってもらうことができます。また、トラックドライバーの方には船内で使えるクーポン券を配布する船社も多いです。船内レストランの食事を楽しみ、大浴場やサウナなどで癒され、英気を養うことができるのではないでしょうか。

リスクヘッジ

 大規模災害時など、道路交通がマヒしている状態でも海上航路は影響がない場合が多いです。2018年(平成30年)7月豪雨では、幹線道路が1週間ほど通行止めになりましたが、海上航路は大きな影響を受けることなく運航しておりました。また、食料品などを運ぶトラックのほか、被災地支援のための緊急車両や給水車、支援物資を運ぶトラックの輸送にもフェリーが活用されました。これらの事象から分かるようにフェリーは災害に強いため、BCP対策の一環としてフェリーでの輸送ルートの検討は一考の余地があると存じます。加えてフェリーは定時運航性が非常に高いためリードタイムの安定化を図ることができるでしょう。

まとめ

 本稿では、国内貨物のフェリー輸送のメリットについてご紹介いたしました。

 メリットも多くある一方で、輸送時間の長さや利用できるルートが限られる等、導入が進んでいないのが実態です。フェリーの利用をより推進するためには、物流会社だけでなく、荷主の主体的な取り組みと協力が欠かせません。人手不足や労働時間の上限規制により「物流需要量>物流供給量」 となりつつある今、従来のサービスレベルではモノが運べない時代になっています。

 「リードタイムはプラス1日余裕を見る」「船便にあわせた納品時間へ変更する」「発注頻度を見直す」など、荷主企業と協力し、フェリーの利用を検討されてはいかがでしょうか。

(文責:榊 明樹)

参考資料

  • 平成30年7月豪雨関連 フェリーによる輸送状況について

001246788.pdf (mlit.go.jp)

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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第543号 2024年8月21日)

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