はじめに
ここでは、ロジ・ソリューションが具体的にどのような物流コンサルティングを提供しているのかイメージしていただくため、架空の会社「雷電工業」を舞台にして、ロジ・ソリューションの物流コンサルティングの典型的な流れをお見せします。
(実際にはお客様の業種や課題によって物流コンサルティングの流れは多種多様なものとなります)
物流部長の悩み
成川部長は52歳。関東の国立大の工学部を出て機械部品メーカー「雷電工業」に入社。以来、一貫して物流部に所属しています。この30年の間に雷電工業も成長し、今では年商1000億円、海外にもいくつかの拠点を構える上場企業となりました。
雷電工業の本社は品川駅の南口に、工場は福島県福島市にあります。倉庫は仙台、厚木、犬山、神戸、大分にあって、福島工場で製造された製品を定期的にトラックで輸送して在庫としています。海外は深センとサンフランシスコ近郊に現地工場を置いています。
今、成川部長を悩ませている問題は二つ。
一つは国内に五か所ある倉庫が手狭になってきているという問題です。
この30年間で製品の物量は10倍に増えたのですが、倉庫の広さは5倍にしかなっていません。結果としてどこの倉庫も在庫商品が山のように積み上がってしまい、入荷、検品、ピッキング、仕分け、梱包、出荷というすべての作業の効率が落ちているのです。会議のたびに現場から「何とかなりませんか」と相談されるのですが、雷電工業の物流部は今の仕事を回すだけで手一杯。何とかしなければと思いつつ、なかなか手がつけられないまま数年が経過してしまいました。
そこに新たに加わったのが、2024年問題です。
トラックドライバーの時間外労働時間の規制上限が現行の1176時間から960時間へと大幅に減らされることにより、ドライバーの数が足りなくなるのです。社長から「2024年問題、うちは大丈夫なのか?」とわざわざ念を推された成川部長は、管掌役員を交えて物流部で話し合った結果、独力では雷電工業の物流改革は無理だと判断して、コンサルティング会社にサポートを依頼することを決めました。
問い合わせから提案まで
とはいえ、物流コンサルティング会社をどう選べば良いのかも成川部長にはよくわかりません。
そこで、検索エンジンに「物流コンサルティング」と入れて出てきた会社の中から3社、大手の外資総合コンサルティング会社を1社、そして母校の同窓会の知人に紹介された物流コンサルティング会社にも問い合わせメールを送ることにしました。ロジ・ソリューションは知人の紹介です。「ここは現場のことをよくわかっているから安心して任せられるよ」というのが知人の推薦の言葉でした。
問い合わせメールの文面は簡単なものです。
「はじめまして
雷電工業の成川と申します。ご相談したいことがあり、ご連絡差し上げました。
当社は1947年創業で今年で76年目、年商は1000億円程度の機械部品メーカーです。産業用機械、特に工業用ロボットのマニピュレータに強みがあります。国内6か所に倉庫があり、海外は30カ国に販社を展開しています。
さて本題ですが、2024年問題に備えて国内の物流ネットワークの再構築をするにあたり、物流コンサルティング業務を行っておられる会社との協業を現在検討しており、数社にお声掛けをさせていただいているところです。
協業の可・不可を含めて一度ご連絡をいただければ幸いです。
お忙しい中恐縮ですが、よろしくお願いします
株式会社雷電工業 購買本部 物流部 成川」
ロジ・ソリューションに成川部長からのメールが届いたのは、2023年の1月下旬のことでした。早速、戦略コンサル部のK部長と中堅社員のUが品川に向かいます。初回の打ち合わせでは、ロジ・ソリューションがどのようなコンサルティングサービスを提供しているのかの説明が中心になります。
K部長は雷電工業の会議室で成川部長の話を聞きはじめるとすぐに、これはまず雷電工業の物流の全体像を客観的に把握する必要があると判断しました。今現在、表面化している「倉庫が手狭になってしまってオペレーションの効率が落ちている」という症状も、もしかすると倉庫が狭いのではなく在庫が多すぎるという問題の現れかもしれないのです。また、「2024年問題に対応できるかどうかわからない」という問題も、現状の把握を抜きにしては解決出来ません。
そこでK部長が成川部長に提案したのは、雷電工業の物流の現状を定性・定量の両面から評価する「物流診断」というプロジェクトです。まずは半年ほどかけて雷電工業の物流の現状把握とアクションプランの作成を行います。次に2023年の後半から順次着手していくことで、2024年3月31日までに2024年問題の対策を済ませ、同時に物流コストの削減も実現しましょうというK部長の説明に、成川部長もなるほどとうなずいています。
その後、雷電工業の物流改革プロジェクトはコンサルティング会社選定のためのコンペとなりました。
提示価格は有名外資コンサルティングファームが圧倒的に高く、内資の物流コンサルティング会社は概ねその半分程度の費用を提示しました。最終的に受注を勝ち取ったのはロジ・ソリューションです。成川部長によると、決め手となったのは「ロジ・ソリューションの提案が一番、改革後の現場の姿の解像度が高かった」から、とのことでした。総合物流企業グループの一員として、あらゆる物流の現場に土地勘があるロジ・ソリューションの強みが伝わったのでしょう。
調査
プロジェクトのキックオフは2023年の2月15日でした。成川部長の最初の問い合わせメールから1ヶ月ほど経っています。ロジ・ソリューションの体制はK部長、U、そして若手のEの3人。K部長がプロジェクトマネジメント、Uがアナリスト、Eが事務局担当です。
早速、3人は福島工場、仙台倉庫、厚木倉庫、犬山倉庫、神戸倉庫、大分倉庫を視察し、現場の人たちのインタビューを重ねていきます。同時に物流部の様々なデータも提供してもらって、コストダウン出来る箇所を探します。
中間報告会は4月と6月に開催され、今までの調査ではこんなことがわかりました、これからこのような調査を進めますという情報が雷電工業と共有されました。雷電工業の福島社長は非常に優秀な人物で資料の読み込みも深く、中間報告会では厳しい指摘やフィードバックが相次ぎます。K部長の長い経験の中でも、これだけ物流について勉強している経営者に出会ったことは数えるほどしかありません。何度も「この程度のアウトプットであればお金を払って頼むようなものではない」と叱られてしまいます。
中でもロジ・ソリューションのチームが最も苦戦したのは、他社との運賃比較というタスクでした。雷電工業と同じような機械部品メーカーがどれくらいの運賃を運送会社に支払っているのか、精度の高い情報をなかなか入手出来ないまま時間が過ぎていったのです。総合物流企業のグループ会社であるロジ・ソリューションはこうした情報の獲得については物流コンサルティング会社の中でもかなり有利なのですが、それでもなお普段のやり方では正確なデータの入手が難しい状況でした。福島社長からも直接「運賃レベルの他社比較をお願いしていたが、それがまだできていないというのはどういうことなのか」という電話が入ります。
そこで最後の手段としてK部長、U、Eの三人は日本各地に散らばるグループの物流現場に直接出向き、必要なデータを急ピッチで収集することにしました。これで最終報告には何とか間に合わせることができたのですが、コンサルティング専門でグループ内に現場を持たない会社であれば時間切れで、福島社長の雷が落ちていたことでしょう。
(「雷電工業の物流改革」その2:実装編に続きます)