高速道路での大型トラックの最高速度時速90km解禁について

物流の2024年問題と高速道路の最高速度引き上げ

535号を担当いたします重栖です。

 トラック輸送は暮らしや経済の動脈を支える上で欠かせない存在ですが、EC市場の成長による荷物の増加やスピーディな配送需要によって、トラックドライバー不足や積載率の低下が進んでいます。

 このような状況下において、トラック運転者の時間外労働時間の上限を年960時間とする規制が今年の4月からトラックドライバーに適用されました。この規制によって、「1日に輸送できる量の減少」や「配送遅延」が発生するのではないかと不安視されています。

 政府はこれらの問題に対応するため、2024年4月1日以降、高速道路での大型トラックの最高速度をこれまでの時速80kmから90kmに緩和しました。

期待効果と懸念事項

今回の最高速度引き上げによる期待効果は、下記が挙げられます。

・単位時間当の移動可能距離増加による納品先までの輸送効率化

・トラック運転者の休息時間の拡充

・トラック運転者の労働時間削減による、長時間労働の減少とトラック運転業務の就業希望者の増加

・高速道路の渋滞緩和

一方懸念事項として、下記が挙げられます。

・減速や加速が必要な走行車線を走らないで、追い越し車線を速度上限で走行するトラックの増加

・交通事故発生率の増加

・荷崩れや商品破損などのトラブルの増加

・「荷物が今より早く運べる」と考える荷主からの強い要望による、運送事業者やトラック運転者の疲労や負担の増加

・速度が高くなることによる燃費の悪化

 今回の最高速度引き上げは一定の効果はあるかもしれませんが、「物流2024年問題」の抜本的な解決にはならないと考えます。

 国土交通省の令和3年調査によると、トラック運転者の「荷待ちがある1運行の平均拘束時間」のうち「運転時間」は全体の54%で、残り46%は「トラックの荷待ち時間」「積み込み時間」等を占めているからです。

 問題解決の為には、運送事業者だけでなく、運送事業者と契約し荷物を発送する「発荷主」、発送した荷物を受け取る「着荷主」の理解や協力が必要です。荷待ち時間や積み込み時間を減らすために、バース予約システムやマテハン導入の検討など、サプライチェーン全体の取り組みとして改善を進め、持続可能な物流システムを構築していく必要があると考えます。

 私が取り扱うコンサルティングテーマも、これまでは「物流費の削減」テーマがほとんどでしたが、「物流拠点の再構築」が昨年から急に増えてきました。その背景には荷主側でも「物流2024年問題」を経営課題として取り扱うようになってきたからであると考えます。

 我々物流コンサルタントも、幅広い業種・業態での豊富な物流改革の経験を活かし「物流2024年問題」を克服し、持続可能な物流の実現に貢献する様、日々取り組んで行きたいと思います

(文責:重栖 嘉明)

(参考)国土交通省資料「トラック輸送状況の実態調査結果(概要版)」

001409523.pdf (mlit.go.jp)

(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第535号 2024年6月26日)

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