はじめに
(2007年7月20日 株式会社 ロジスティクス・パートナー主催のロジスティクスSCMフェアにて行ったセミナーより)
「サード・パーティー・ロジスティクス」という言葉は、1996年ごろから日本でも使われだし、いつのまにか一般的な言葉となってきている。現在では、検索エンジンで10万件以上のヒットがあるようになったが、はやり言葉として使われていることも多いように見受けられる。
今回は、この「サード・パーティー・ロジスティクス」(以降3PLと略)が、経営に与えるインパクトについて考えてみる。
サード・パーティー・ロジスティクスとは
3PLとは、1997年に閣議決定された「物流総合施策大綱」にも3PLは登場し、「サード・パーティー・ロジスティクスとは、荷主に対して物流改革を提案し、包括して物流業務を受託する業務」と定義付けがされている。
当時としては、この定義が精一杯だったのかもしれないが、現在議論するにはもっと明確な定義やタイプ分けが必要ではないだろうか?
このサード・パーティーの「3」の意味は、
1: 荷主
2: 物流事業者
3: 3PL事業者
というものである。この3PL事業者の領域は、「ロジスティクス戦略構築から物流オペレーション管理まで」といえる。特に、現在の物流の枠にとらわれないことや物流会社/コンサルティング会社とは異なることがポイントである。
つまり、新しい業態である3PL事業者は、荷主のパートナーとして、荷主の立場から、ロジスティクス戦略構築から物流オペレーション管理までの担当だ。
3PLの役割
3PLの役割は大きくは、次の4つである。
・荷主と共同で行うロジスティクス戦略の構築
・KPI(Key Performance Indicators重要業績評価指標)
を活用したロジスティクスの管理と改善/改革
・実物流業務の管理と改善/改革
・荷主に対して業務委託によりブラックボックス化しないための見える化
つまり、3PL事業者は、戦略立案から実業務の管理までを行い、その活動を見える化し、ブラックボックス化を防ぐことが大きな役割だ。
3PLと元請
3PLと従来からある元請の違いは次のようなものである。
つまり、3PL事業者は、荷主のパートナーとして荷主の視点から業務を推進するため、元請事業者とは視点が180度異なるのが違いだ。
3PL化のメリットと課題
その3PL化のメリットと課題は次のようなものである。
つまり、3PL化は、ロジスティクス業務を包括的に委託/受託することでWIN-WINの関係を目指すが、そのためには解決すべき課題もあるのが現状だ。
3PLのキーワード
以上のことから、3PLのキーワードを再度整理すると次の3つである。
・荷主の立場
・パートナー
・ロジスティクス
3PLの議論は、定義を明らかにしてすすめることが必要であり、3PLは、ロジスティクスの高度化のキーワードだ。
企業経営に求められていること
現在企業経営に求められていることは、大きく2つあり、企業価値を高めることと社会的責任を果たすことである。
企業価値を高めるには、事業価値を高めることと資産効率を高める観点がある。事業価値を高めるには、事業ポートフォリオの見直しや効率的な事業運営をすることが求められる。
この効率的事業運営こそが、サプライチェーンマネジメントやロジスティクス、営業物流の利用などロジスティクスに大いに関連する項目である。
一方資産効率を高めるためには、物流施設などの資産売却や在庫量の削減が求められる。最近物流施設や物流子会社の売却のニュースがあるが、これを狙ったものである。また、サプライチェーンマネジメントが一般に知られるようになり、最近では書店に在庫管理や在庫削減関連の書籍が増えている。これもこの方向に沿ったものといえる。
社会的責任を果たすことを求められているが、ロジスティクスは公共の道路や空港や海で事業として行われることもあり、特に環境、安全、社会貢献などが必要な業界である。
実現するための方策と変わること
以上のような企業経営に求められることを実現していくための方策と結果として変わることは次のようなものである。
今までの物流事業者の領域だろうか?
対象領域の広い3PL事業者の活用が実現の近道だ。
3PLが経営に与えるインパクト
企業を取り巻くプレイヤー(株主、従業員、取引先、消費者、社会・・・)からの要請のレベルは高くなり、その求められるスピードも早くなっている。これは以前にも増して変化が激しい時代だからである。
求められることに自社だけでは応えられないか、応えるために自社の貴重なリソースの多くを裂く必要があるのが現状である。
それを解決するためには、パートナーとの協業という経営スタイルへの変革を行うことが必要だ。
そのロジスティクス領域におけるパートナーこそが「3PL事業者」だ。
おわりに
ロジスティクスは企業経営そのものであるとの認識は広まりつつある。しかしながら、まだまだその地位は低いのが現状である。また、ロジスティクスに関係するものも、営業的な観点からや流行言葉として利用していることも見受けられる。
今後は地位向上のためには、荷主、ロジスティクス関係者、官公庁や公的機関が協力して、議論し、施策を推進していくことが必要だ。
(文責:中谷)
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