物流分析手法シリーズ11【物流センター設計編(後編)】

今回は前回に引き続き「第11回 後編」として、物流センター設計のレイアウトからオペレーションの設計をご紹介させていただきます。

レイアウトプランニング

これまでの各分析を踏まえた上で、物流センターレイアウトを組み立てますが、その計画手順は下記のようになります。

(ア)目的と必要な機能を明確にする。

まずは、物流センターの目的と位置付け・必要な機能及び条件を再確認し、レイアウトの評価基準を設定します。

(イ)物流条件(作業フロー,各工程の特性)を明確にする。

次に、入荷から出荷までの作業フロー(入荷→検品→入庫→保管→出庫→検品→梱包→出荷)、及び各物流工程ごとの特性を明確にします。(例:「保管」の特性:在庫アイテム数・在庫形態・在庫数量・出荷頻度・出荷形態 等)

(ウ)スペース要素を洗い出し、その所要面積を算定する。

続いて、各物流工程に必要なスペース要素(作業場など)を洗い出し、そのスペース要素ごとに作業方法及び導入設(マテハン設備)を決定し、各物流行程毎の所要面積を算定します。

図表1 保管レイアウト 基本原則
 

また、マテハン設備を選択するに当たっては、マテハン設備の機能や能力を十分に考慮し選択することが重要です(マテハン設備の機能分類について図表2参照)。マテハン設備の選択を誤った場合、物流センターの運営能力が十分に発揮できず、作業性の低下や作業人員の増加、あるいは作業ミスの多発などの要因になります。

図表2 マテハン設備の機能分類

(エ)ブロックプラン(配置計画)を策定する。

(ウ)で算定した結果をもとにブロックプランを策定します。この際、各スペース要素間の相関性を配慮しながら複数案検討し、作業動線の点から比較評価することが重要です。下記に一般的なブロックプランを示します。


・入荷場と出荷場を明確にできる為、クロスドッキングのような入出荷の同時並行処理が行いやすい。
・作業場を工程順に配置しやすいので、物流センター内の作業及び管理が効率的に行える。


・入荷即出荷が効率的に行える。
・入荷と出荷の時間帯を分けられる場合には、入荷場と出荷場を融通し合える。
・入出荷の場所が1ヶ所なので入出荷の作業及び管理が効率的に行える。

(オ)基本レイアウトの決定

最後に、(エ)の結果をもとに(ア)で明確にした必要な機能・条件に対して評価しレイアウトを決定します。

オペレーションプランニング

レイアウトが決まると、最後に物流センター内の入出庫作業について、運用スケジュールと人員配置計画を策定します。

(ア)運用スケジュールの策定
まずは、物流センター内の大枠の運用スケジュールを作成し、各物流工程の作業可能時間を明確にします。(例 図表3参照)。

図表3 物流センター運用スケジュール(例)

運用スケジュールは、物流センターを取り巻く制約条件(図表④)によって大枠が決まります

例えば、顧客からの出荷指図受信が昼12時であれば、ピッキング作業はそれ以降の開始となりますし、また納品指定時間が翌日の朝8時で且つ配送リードタイムが12時間必要であれば、遅くとも19時半頃までには出荷準備を完了させておかなければなりません。(よって、この場合の出荷作業時間は12時半~19時半の7時間となります。) さらに、庫内作業をパートやアルバイトで対応しようとした場合、早朝や深夜など時間帯によってはなかなか人員の手配が出来ない可能性もあります。

この様に、全体運用スケジュールを作成するにあたっては、まずは各種制約条件を洗い出し、その条件を満たす中で、より効率的な計画を作成していくことが重要になります。

図表4 物流センターの制約条件

1時間による制約条件稼働時間・リードタイム・経年変化など
2人に関する制約条件作業要員の質・手配の容易さ・安定
3前後の物流工程による制約条件前後の工程からの影響・与える変化の大きさ
4設置場所による制約条件温湿度・音・振動・電波・ほこり・油など
5法的制約敷地の諸規制・建築計画に対する諸規制

(イ)人員配置計画の策定

次に、図表5に示すように作業毎のタイムスケジュールと作業人員配置計画を作成します。
作業人員は、各作業種別による単位当りの生産能力(つまり作業生産性)やフォークリフトなどの運搬機器の搬送能力と、その取り扱う物流量(ピース・ケース・重量・容積)により必要な要員数と搬送機器を算定し、作業人員の配置を計画します。なお、取扱う物流量が週や月で大きく変動する場合には、ピーク日と平均日の2パターンに対する人員配置計画を行うとよいでしょう。

図表5 作業タイムスケジュール・人員配置計画(例)

また、各作業種別による単位当りの生産能力(作業生産性)を設定するに当たっては、適切な作業方法を選択することが重要です。

例えば、物流センターで採用されるピッキング方式は、大別すると「摘み取り方式(オーダー別シングルピッキング方式)」と「集約ピック+種まき方式(バッチピッキング)」の2種類があります。それぞれの特徴を図表6に示していますが、このどちらを選択するかは、個々の物流センターの物流特性(アイテム数・出荷先数・出荷物量・荷姿・注文の偏り・受注から出荷までのリードタイム等)によって決まります。

図表6 ピッキング方式とその特徴(例)

以上が、物流センターを設計するに当たっての主な計画手順となります。しかし実際には、この他情報システム設計や各マテハン設備の仕様決定、さらには事務オペレーションや現場作業等各種運営マニュアルの作成等、決められたスケジュールの中でやらなければならないことが多々ありますが、大事なことは各計画手順において当初設定した「物流センターの目的・目標」に対してどうなのか、評価をしていくことです。

(文責:LSコンサル第6部 熊澤・福田・岩本)

【参考文献】
社会保険研究所・中央職業能力開発協会 編
「ロジスティクス・オペレーション 3級」標準テキスト
社会保険研究所・中央職業能力開発協会 編
「ロジスティクス管理 3級」標準テキスト
社会保険研究所・中央職業能力開発協会 編
「ロジスティクス・オペレーション 2級」標準テキスト
社会保険研究所・中央職業能力開発協会 編
「ロジスティクス管理 2級」標準テキスト
RCC「物流センター構築計画マニュアル」研究会 編著
「PDOハンドブック 物流センターのシステム構築と運用」 流通研究社
津久井英喜、河西健次 編著 「図解 よくわかるこれからの物流」 同文館出版

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