2020年3月末に上梓させていただきました「基本がわかる実践できる 物流(ロジスティクス)の基本教科書」から、今回はサードパーティ・ロジスティクス(Third Party Logistics,3PL)について取り上げます。
3PLは伸び続けている
3PLは、海外では1990年台の初め、日本では1990年代後半に本格的に登場してきました。月刊ロジスティクス・ビジネスの情報をもとに最新情報を整理しますと、米国の市場規模は、2022年において4,055億USドルとなっており、過去20年間で6.2倍、10年間でも2.9倍の成長を遂げています。一方、日本の市場規模は、4兆1,660億円となっており、過去17年間で4.2倍、10年間で1.7倍と伸長しています。3PLの受託業務の拡大もありますが、昨今の単価上昇も伸びには含まれています。
3PLの定義は、1997年の総合物流施策大綱に初めて登場し、その後2005年の総合物流施策大綱では加筆されたものが発表されており、「荷主企業に代わって、最も効率的な物流戦略の企画立案や物流システムの構築の提案を行い、かつ、それを包括的に受託し、実行すること。荷主でもない、単なる運送事業者でもない、第三者として、アウトソーシング化の流れの中で物流部門を代行し、高度の物流サービスを提供すること。」となっています。その後いろいろな形で発展をとげていますが、総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)の環境変化に対する課題から最新の3PLが備えるべき力を考えてみましょう。
最新の3PLのあるべき姿とは
「人口減少の本格化や労働力不足への対応」では、3PLとしての専門的な能力の強化が求められています。思うように物流ができないリスクや物流コストが上昇していく中、安定的でできるだけコスト上昇をおさえるような最適なロジスティクス体制構築・維持ができる力です。
「Society5.0 の実現によるデジタル化・イノベーションの強化」では、新技術・新システムの活用が求められています。今まで変化の少なかった物流に多くの新技術・新システムが登場しており、その導入や応用などができる力です。
「新型コロナウイルス感染症への対応」では、今回のようなサプライチェーンの急激な変化に対して、スムーズに対応できるような準備や対応力が求められています。サプライチェーンの範囲拡大や変更に対する柔軟力とサプライチェーンの最適維持体制ができる力です。
「災害の激甚化・頻発化」では、災害対応力強化が求められています。これは、災害に対する準備と発生時の適切な対応ができる力です。
「地球環境の持続可能性の確保やSDGsへの対応」では、財務的な視点に加えて非財務的な視点を持つことが求められています。SDGsやESGを意識しサプライチェーンの一員として、非財務的な視点からの企画などができる力です。
これらは3PLだけに求められているのではなく、荷主にも求められていることです。しかしながら、取り巻く環境変化が大きく、そのスピードが速い時代においては、単独での対応が難しくなってきています。したがって、「荷主部門の立場」で「戦略的パートナー」として業務を行う3PLとともに、「ロジスティクス領域」全体で活動を推進することが有効です。3PLのキーワードは以前と変わりませんが、現在は大きく変化する環境に合わせて、より広く、より深い対応が求められています。
新3PL時代の幕開けといっても過言ではないと思います。
(文責:中谷 祐治)
参考
中谷祐治(2020) 「基本がわかる実践できる 物流(ロジスティクス)の基本教科書」日本能率協会マネジメントセンター
中谷祐治(2015) 「間違いだらけの物流業務委託」日刊工業新聞社
国土交通省 総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)
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また、今回ご紹介した内容は、「基本がわかる実践できる 物流(ロジスティクス)の基本教科書」(くわしくはこちら)に記載されています。書店で手に取っていただけますと幸いです。