生鮮食品のECサイトの現状とこれから

新型コロナウィルス感染拡大を機に、消費者の消費行動が変化し、様々な商品がECサイトやデリバリーで積極的に購入されるようになり、随分と時間が経過しました。日々の食生活に欠かせない生鮮食品が、ECサイト市場では非常に苦戦しています。今回は、その理由を探ってみたいと思います。

まず、ECサイト市場全体の現況です。2020年度物販系分野「BtoC-EC」の市場規模は、12兆2,333億円(対2019年:21.71%)、EC化率 8.08%(対2019年:1.32%)と市場拡大が続いています。しかし、食料・飲料・酒類の市場規模は、2兆2,086億円(対2019年:21.13%)、EC化率3.31%(対2019年:0.42%)と売り上げ規模が、BtoC市場全体の21.13%を占める巨大な市場にもかかわらず、EC化率は、わずか3.31%にとどまっています。

次に、食品専門のECサイトの現況です。2019年⾷品ECサイト市場規模(DtoC ECサイトも含む)は、3兆8,086億円です。形態別市場構成比をみると、ショッピングサイト:39.4%、生協:38.4%、食品メーカー直販:16.1%、ネットスーパー:3.8%、自然派食品宅配:2.3%となっています。

新型コロナウィルス感染拡大による外出自粛をきっかけに、最もECサイトからの購入の割合が増えた商品は、「生鮮食品以外の食品・飲料」となっています。一方生鮮食品は、新型コロナウィルス感染収束後も実店舗とECサイトを併用する消費者が多いと予想されており、2021年7月度のスーパーマーケット既存店ベース売上は、対2019年売上比106.7%、特に生鮮3部門(肉・魚・野菜)の合計は、対2019年売上比109.6%と好調に推移していることが表しています。

ここで、生鮮食品のECサイト拡大に向けての課題を考えてみたいと思います。
まず、消費者の立場から考えると
・スーパーマーケットやコンビニエンスストアの利便性が高く、ECサイトで購入する必要がない。
・生鮮食品は、品質、鮮度が一定ではないため、それらにこだわる消費者のニーズにECサイトではこたえられない。
と2つの大きな課題があります。

次に、生産者・供給者の立場から考えると、
・配送コストが高いにもかかわらず、生産者・供給者が負担しているケースが多い。
・単価の低い商品にもかかわらず、消費者からの細かな要望が多く、対応するための人件費などで利益を圧迫する。
・賞味期限管理や食品衛生法の遵守などが求められ、さらに、保管コストも安価ではない。
と3つの大きな課題があります。

この様に課題は多くありますが、生鮮食品は、EC化率を0.1%あげるだけで30億円の売り上げを獲得できる巨大市場です。物流の観点から、この課題克服に向けてなにか取り組むことはできないでしょうか。

そのヒントは、海外では市場が急激に拡大。昨年、日本にも進出し、更に今後は大手デリバリー会社も参入するといわれているDマート(Dark Mart)にありそうです。Dマート(Dark Mart)とは、従来のECのように数日待たされて商品を受け取るサービスではなく、数十分以内に商品が届くQC(Quick Commerce)実現の為に、オンラインで販売されている商品を保管して置く拠点のことであり、顧客の来店の無いスーパーマーケットのような形態のため、この様に呼ばれています。海外では、QC市場が成長し国内にこのD マートを数百店舗設置している国もあります。
この業態の長所は、注文から手元に届くまでの時間が短く、更に既存のデリバリーライダーが配送をすることで配送費を抑えることができることです。反面短所は、拠点数がある程度増えるまで、品揃えが限定的になること、更にサプライチェーンの構築が非常に難しいことです。取扱商品数は、将来的には生鮮食品を含め3,000SKUになるとも言われており、スーパーマーケットなどの競合になることも十分に考えられます。

では、このモデルを参考に、生鮮食品のECサイト拡大に向けて、物流会社のノウハウを活用し、配送拠点の拡大と物流費削減でできることはないでしょうか。
例えば、
・業態の垣根を越えた細かな配送網の構築にむけ、業務用保冷ボックスなどを有効に利用し、地域を熟知している新聞販売店などに協力を依頼するための仲介や実際の配送に向けた教育を行う
・配送拠点の最適化と効率的なサプライチェーン構築に向け、空きスペースの情報共有や活用などを積極的に行う
など、新たなビジネスモデルが構築できれば、生産者・供給者の悩みも解消され、結果的に市場の拡大につながるのではないかと期待できます。

新型コロナウィルス感染拡大、高齢化社会など乗り越えなければならない多くの課題に直面している日本において生鮮食品のECサイト市場拡大は、大きな挑戦となるはずです。私は、これからもこの市場に着目し続けていきたいと思います。

(文責:長久 佳典)

【参考文献】
2020年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)報告書
2020年7月20日 MarkeZine News
2020年8月28日 株式会社矢野研究所調べ
2021年2月15日 公益財団法人流通経済研究所レポート
2021年6月22日、一般社団法人 全国スーパーマーケット協会発表の「スーパーマーケット販売統計調査
2021年7月 経済産業省 商務情報政策局 情報経済課

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