物流と食品廃棄物について考える:食品廃棄物は物流の中でも発生している。

日本の食品自給率は40%

昨今世界の人口はますます増加する傾向の中、食糧確保の問題(食料資源として昆虫も対象となってきました。)が取り沙汰されてきていますが、日本の食品自給率は40%と主要先進国の中で最も低い水準を指しています。

原因の一つは戦後の日本人の食の変化による影響が大きく、欧米食だけでなく多種多様のグルメを求め、街には和洋中華、多国籍、無国籍とさまざまな料理店が軒を連ねています。まさに「飽食国家日本」というところでしょうか。

その結果として企業や家庭から年間約1900万トン(2005年度農林水産省発表)もの食料品がゴミとして廃棄されています。

そのうち食べられるのに捨てられている食品ロス量は500万~900万トンにもなるといいます。 このようなゴミは食品廃棄物と呼ばれ、製造段階の動植物性残さなどを産業廃棄物、流通段階の売れ残り・食料廃棄、消費 段階の調理屑・食べ残し・食品廃棄を一般廃棄物に分類されます。

預かり保管商品と食品ロス

なにも発生元はメーカーやスーパー等流通、家庭の中だけではなく、物流も無縁の関係ではありません。食品廃棄物は物流の中で発生するのも多くあります。預かり保管商品での発生です。

  • 包装材がデザイン変更になったため、旧のデザインの商品が出荷できなくなったもの。
  • 包装材にキャンペーン企画を施し、キャンペーン終了により販売が出来なくなったもの。
  • 売れ残りそうであるが、再販扱いによる価格値崩れ、ブランドイメージ維持のため、そのまま処分扱いにした。
  • スーパー店頭に並ぶころに消費期限がぎりぎりになるので流通出来ないと判断された「出荷期限」品。
  • 社会問題の対象商品となり、突然の購買不人気で発生した売れ残り。(中国製商品で近年発生しました。)

このような商品は、モノの動きで発生する廃棄物よりコントロールが難しく、今どれくらいの量が発生しているかとらえにくい部分です。

食品ロスを防ぐ二つの取り組み

こうした食品廃棄物は、次の処理方法があります。

(1) 食品として利用
(2) 資源としての再生利用
(3) ゴミとして処理

です。

(1) はここ数年ニュースでも取り上げられている「フードバンク」です。まだ賞味期限が残っている、品質には問題がないのに売り物にならなかった食品を集め、低所得者やホームレスなどに配布する活動です。市場に流通不可な余剰食品を蓄え 分配することから「フードバンク(食べ物の銀行)」と呼ばれ、ボランティア先進国のアメリカではおよそ 50年前から始まっています。

具体的には、ボランティア団体やNPOが、食品メーカーなどから余剰食品を無償で譲り受け、ホームレス支援団体や生活支援施設に配ります。東京からはじまり、兵庫、広島、沖縄などへと活動の輪が広がっています。

会社が環境問題に前向きに取り組む企業である事をアピールする目的も含めて一部のメーカー、流通業者が積極的に余剰 食品の提供を行っている事例も有ります。企業側にとって、「余剰食品を処分するときに生じる廃棄コストは大きなロスコスト」をいかに違った利益につなげることが重要というところではないでしょうか。

(2)は賞味期限切れ等、食料としての利用不可となった廃棄物の再利用です。再生方法としては、飼料を生産して畜産業 者などで利用する飼料化、肥料を生産して農家などで利用する肥料化、油脂や油脂製品への利用、メタン利用などがあります。

しかしこうした再生利用は飼料、肥料として使用可能な成分か、他のゴミが混入していないか検査が必要となります。更なる手段として、リサイクルが困難なものは熱回収、リサイクルできなかったものは、脱水、乾燥、発酵、炭化を行い、滅量への試みが行われています。

ほとんどはゴミとなっている

そしてほとんどは (3)の処分、焼却処分し、埋立処分をおこなう今までと同様の処分方法です。

物流においても廃棄物処理は大きな問題です。処理業者への配送コスト、処理コスト等、処分の廃棄コストをなるべく小さくするために、一定物量がたまるまで長い間食品廃棄物が倉庫内で保管されます。

倉庫は、

  • 保管のためのエネルギーが発生(冷凍品であれば冷凍を維持するエネルギー、通常保管でも商品を管理するエネルギー)
  • 不良在庫があるためにロス発生(保管スペースがとられるため、他の流通保管品の物流作業へのロス)

こうした無駄なエネルギーやロスは、確実に「作業のムダ」を生んでいます。

物流会社もわが身の問題として、配送手段の提供、賞味期限切れの在庫商品の情報提供、リサイクル後の販路、搬送手段 の提供など、食品廃棄物処理の川上から川下に至る流れ、再生利用の川上への搬送とリサイクル・ループ構築に参画が必要 になってきています。

最後に、年間約1900万トンのうち、約半分は家庭から発生している消質段階でのゴミということも認識が必要です。普段家の冷蔵 庫を開ければ、日本の現状を目の当たりにできるかもしれません。今週末は家庭から食品廃棄物を出さない心がけとして、家庭の残さ処分を考えてはいかがでしょうか。

注釈:) 動植物性残さ 食料品、医薬品、香料製造において原料として使用した動物または植物による固形状の不要物のこと

(文責:岩本)

【参考文献】
国立環境研究所 環境展望台 食品リサイクル技術
http://tenbou.nies.go.jp/science/description/detail.php?id=63
フードバンク関西HP
http://foodbankkansai.org/

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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第48号 2009年9月9日)