荷役の効率化と今後の展望について

お世話になっております。584号を担当いたします中澤です。

 物流現場では長時間労働や不規則シフトといった労働環境の厳しさに加え、高齢化やEC拡大による需要増が重なり、慢性的な人材不足が顕在化しています。そのため、限られた人員で効率的な荷役作業を進める仕組みづくりが強く求められています。
 こうした状況を踏まえ、荷役効率化を実現する有力な方向性が『自動化技術』の活用です。荷役はこれまで人力に大きく依存してきましたが、近年は自動化やデジタル化の進展により、従来の常識を覆すような新しい取り組みが広がりつつあります。人手不足の解消だけでなく、作業の精度向上、コスト削減、安全性の確保といった多方面の効果が期待できることから、今後の物流現場において自動化は避けて通れない選択肢となりつつあります。
 本稿では、自動化の具体例として、自動配送ロボットやAGV(Automatic Guided Vehicle:無人搬送車)・AMR(Autonomous Mobile Robot:自律搬送ロボット)の活用ポイントを取り上げるとともに、導入にあたって直面する課題とその対応策について整理します。 

自動配送ロボットの社会実装

 自動配送ロボットは、物流拠点や小売店舗で商品を運ぶ役割を担い、人手不足や買い物困難者支援といった社会的課題の解決に資する技術として注目されています。2023年4月の道路交通法改正により、低速(6km/h以下)・小型(L120 × W70 × H120以下)の自動配送ロボットが公道を走行できるようになり、社会実装に向けた大きな一歩が踏み出されました。
 経済産業省は今後3年間を「集中的な実証実験期間」と位置づけ、各地で実証が進められています。産業界と行政が連携し、知見を共有しながら目指すべき姿を具体化していく取り組みが続いています。これらの活動が本格的に実装へ移れば、ラストワンマイル配送の省人化や新しいサービスモデルの確立につながり、現場の負担軽減と同時に生活利便性の向上にも寄与すると考えられます。

工場・倉庫における自動化技術

 荷役作業の効率化を進めるうえで代表的な自動化技術が、AGVとAMRです。両者はいずれも荷物を運搬する機能を担いますが、その特性や設計思想は異なります。
 AGVは古くから物流や倉庫で導入されており、有軌道型(磁気テープやガイドに沿って走行)と無軌道型(自立移動や追従式)に大別されます。決められたルートを安定して走行できる点が強みで、レイアウト変更が少ない現場や定型的な搬送作業に適しています。
 一方、近年注目を集めているのがAMRです。センサーやカメラを用いて周囲をリアルタイムに認識し、自律的に経路を判断します。障害物を避けながら移動できるため、人や設備が動く複雑な環境にも対応でき、変化への柔軟性が高いのが特徴です。
 重要なのは、どちらが優れているかではなく、用途や環境に応じて使い分けることです。固定ルートでの繰り返し搬送にはAGVが有効であり、人と機械が共存する変動の多い現場ではAMRが適しています。場合によっては両者を併用し、それぞれの特性を組み合わせることで、現場全体の効率化を実現することも可能です。

導入課題と対応策

 自動化技術は有力な解決策である一方、導入にあたってはいくつかの問題点があります。まず挙げられるのがコストです。初期投資が大きいため、補助金・助成金の活用やリース契約の検討、スモールスタートによる段階的な導入が現実的なアプローチとなります。
 もう一つは新技術に対して従業員の適応に時間を要することです。新しい技術は浸透に時間がかかる上、長年慣れ親しんだオペレーションを変更するため、現場に不安を生じさせることも少なくありません。そのため、導入前の研修やマニュアル整備、実機を用いた段階的な訓練を通じて理解を深め、導入後もフォローアップを継続することが欠かせません。教育とサポートを重ねることで、従業員が安心して技術を使いこなし、現場全体として効率化の効果を享受できるようになります。 

まとめ

 本稿では、荷役を効率的に行う手段の一つとして自動化技術を紹介しました。ただし、自動化は技術を導入するだけでは十分ではありません。教育や運用体制の整備とセットで進めてこそ、自動化の効果は最大化されます。特に導入初期は、小規模なプロジェクトや限定的な領域から取り組むことで現場に慣れを促し、成果を検証しながら改善していくことが重要です。
小さな取り組みからでも始めることで成果が積み重なり、人手不足を補いながら効率性と安全性を高め、持続可能で競争力の高い物流モデルの構築につながります。
自動化技術の導入について、今一度検討されてはいかがでしょうか。 

(文責:中澤 梓) 

(参考)
自動配送ロボットの将来像を取りまとめました (METI/経済産業省)
 
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