はじめに
我が国の物流を支えるトラックを運転するドライバーの数は、他の業種と同じく少子高齢化によって減少傾向にあります。さらに、労働時間の制限(物流の2024年問題)によって、ドライバー1人が働くことの出来る時間が減ったこともあり、輸送能力の維持が一層困難となっています。その結果、輸送能力を補うためドライバーの需要は増加傾向にあります。今回は、ドライバー需要を補う選択肢として、女性ドライバー登用の可能性についてお話します。
トラックドライバーの人口予測と女性ドライバーの現状
経済産業省の調査によると、営業用トラック運転者の需要は、2025年度予測で約116万人、2030年度予測では118万人と増加傾向となっていますが、それを補うドライバー数は、2025年度予測で101万人、2030年度予測では97万人と不足する傾向となっています。(表1)
表1:営業用トラック運転者の将来予測
2025年度予測 | 2030年度予測 | |
---|---|---|
需要 | 116 | 118 |
ドライバー数 | 101 | 97 |
不足数 | -15 | -21 |
不足率 | 13% | 18% |
単位:万人
続けて、女性ドライバーの人数を見ていきたいと思います。総務省の調査によると、2023年度の道路貨物運送業の就業者数は、男女合計で約200万人に対し、女性が約41万人と約21%を占めています。そのうち、輸送・機械運転従事者(トラック・フォークリフトなどの就業者)は男女合計で約88万人でしたが、そのうちの女性は約3万人と全体の3%にとどまっています。(表2)
表2:貨物運送業就業者(2023年度)
全体 | うち輸送機械運転従事者 | |
---|---|---|
女性 | 41 | 3 |
男性 | 159 | 85 |
合計 | 200 | 88 |
女性比 | 21% | 3% |
単位:万人
女性ドライバー登用の動きと可能性について
上記のような現状を打開すべく、国を中心として女性ドライバー登用を促進する「トラガールプロジェクト」が進められています。このプロジェクトは、長時間労働の改善、作業負担の軽減、子育て支援、多様な働き方の実現、そして女性専用施設や休憩スペースの整備などを促進することで、運輸業界における女性の活躍を後押しし、多様な人材の参画を目指しています。女性ドライバーの活躍により、ドライバー不足のみならず、企業イメージの向上や男性では気づけない新たな提案を生み出すことで、営業力強化に繋がっている、といった実績も報告されています。
女性ドライバー登用の注意点
女性ドライバー登用で考慮すべき大きな点として、重量物の荷役作業での負担が挙げられます。重量物を直に取り扱う作業は、腰痛などの体の不調を引き起こします。女性の場合、取り扱う重量数は女性労働基準規則で定められており、年齢18歳以上の従業員が断続作業を行う場合は30kg以上、継続作業の場合は20kg以上の重量物を持つ業務に就かせることを制限していますので、パレットやフォークリフトなどの補助道具を活用し、積込・荷降ろし作業の負担を軽減することが不可欠です。荷役作業の負担を減らすことは、女性が働きやすい環境づくりに直結し、ひいては運送業界全体の労働環境改善にも資する取り組みとなるでしょう。
最後に
今回は、トラックドライバーの現状と女性ドライバー登用の可能性について書かせていただきました。ドライバー不足を補うため、労働環境を見直すことで、女性ドライバーの登用を促進してみてはいかがでしょうか。
(文責:新井 和雅)
(参考)
経済産業省HP:「物流の2024年問題」の影響について(2)
総務省HP:労働力調査2023年度年度次 産業、職業別就業者数
国土交通省HP:トラガール推進プロジェクト
厚生労働省HP:女性労働基準規則
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