トラック運送事業者数と輸送トン数の推移を再確認
2001年、第一次小泉政権発足から規制緩和が積極的に行われ、中小規模のトラック運送事業者が一気に増加しました。その結果、運送サービスやコスト競争力の高まりが歓迎された一方で、様々な社会課題を生み出してきたのは、読者の皆様もご存じの通りです。
筆者が本メルマガで触れてきた「2024年問題」にも関連しますが、改めてトラック運送事業者数(※霊柩除く)と輸送トン数(※営業用トラック対象)の推移を見てみました。(図1)
2007年ごろをピークに減少傾向にあったトラック運送事業者数は、2015年以降下げ止まっているように見受けられます。同じく、輸送トン数は2016年以降約3000億トンで推移しており、大きな変化が見受けられませんでしたが、コロナ影響により2020年は大きく落ち込みました。こうした状況に「2024年問題」がどのように波及するでしょうか。
2022年の物流業界のM&A件数は82件
企業のM&Aを手掛ける日本M&Aセンターによると、2022年の物流業界のM&A件数は82件で、コロナ禍前の2019年の57件と比較すると大幅な増加傾向にあります。同センターは、2022年のM&A事例からみた昨今の譲受企業、譲渡企業のそれぞれが考えるニーズを、次のポイントにまとめています。
譲受企業
・2024年問題解決に向けた拠点獲得
・事業規模の拡大
・人材、設備、車両の獲得
譲渡企業
・後継者不在
・経営に関する先行き不安
・2024年問題対応の自助努力の限界
大手と中小、それぞれの課題
ここから見えてくるのは、「2024年問題」対策も含め、譲受企業のニーズは大手物流企業の課題であり、譲渡企業のそれは中小規模の運送事業者が抱える課題が、それぞれ露呈されているということです。
あたり前と言えばあたり前の傾向かもしれませんが、今後、譲渡企業の対象となるであろう中小規模の運送事業者数を考えると、先の日本M&Aセンターの実績傾向から、大手物流企業によるM&Aがさらに加速することが想像されます。そうなると、将来的にはM&A成立後のPMI(経営統合プロセス:Post Merger Integrationの略称)の重要性が増してくるでしょう。
M&Aを最も成功させている経営者と評される、ニデック株式会社(旧:日本電産)の永守重信社長は、買収後の企業に徹底させているのは、創業当時からポリシーとしてきた「3Q」(良い社員:Quality Worker、良い会社:Quality Company、良い製品:Quality Products)と「6S」(整理、整頓、清潔、清掃、作法、しつけ)だそうです。
文化や生い立ち、慣習の違う企業同士が統合して、ともに成長しシナジーを創出するには、まず、基本となる経営方針の土台を徹底して固めることが大切であることを示唆しているのかもしれません。
(文責:貞 勝利)
(参考)
- 令和4年トラック輸送データ集(全日本トラック協会)https://jta.or.jp/wp-content/themes/jta_theme/pdf/chosa/yuso_data2022.pdf
- 日本M&Aセンター https://www.nihon-ma.co.jp/
- 「太陽よりも熱い男 日本電産創業者 永守重信ものがたり」https://www.nidec.com/-/media/www-nidec-com/corporate/about/message/comics/pdf/nagamori.pdf
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