高速道路無料化はトラック業界にとってメリットとなるのか?

はじめに

民主党政権が発足して早1ヶ月が経過しました。中でも前原国交相の八ツ場ダムの建設中止、羽田の国際ハブ空港化の方針等の具体化表明が世論の注目を集めています。トラック業界においては、衆議院選マニフェストの目玉の一つである「高速道路の原則無料化」の動向が気になります。トラック業界では無料化のメリットとデメリット、どちらが多いのでしょうか。

「高速道路の原則無料化」とは

高速道路を段階的に無料化することで流通コスト引き下げや地域経済の活性化、渋滞の解消などを目指しています。

具体的には、割引率の順次拡大などの社会実験を実施し、その影響を確認しながら無料化していく、となっています。財源は1.3兆円。経済波及効果は最大で7.8兆円(07年度国交省試算)となっています。但し、この数値には他の交通機関が受けるマイナス面などが加味されておらず、再度試算しなおすと言われています。

2010年度の国交省概算要求では、高速道路の無料化への着手として6千億円を計上。経済効果や渋滞、CO2排出量への影響を見極める為の社会実験雪用との位置づけで地域や時間帯を限定して無料化に着手するとの事です。

トラック業界への影響は…

荷主からの運賃値下げ要請

「無料化=運賃削減」という簡単な図式ではない様な気がします。

無料化の効果がありそうなのは域内配送ではなく長距離輸送と思われます。しかし、長距離輸送であっても下請け・孫請けとして実運送を行っている中小の事業者は安価な運賃の中で赤字とならない様、高速を使わず一般道におりているという話も聞きます。無料化効果のない運行においては、トラック業界が恩恵を受けるというより、運賃値下げ圧力の懸念の方が強いような気がします。一方、ローリー車等の高速利用区間を含んで運行ルートを定めた専用車契約においては、運賃削減につながると思われます。

渋滞発生による貨物の延着防止

現在の土日祝日のみの1000円高速では、土曜午前中の下りと日曜午後の上りの渋滞が増加したと言われています。今後の平日も含めた高速道路の無料化では、予測が難しいですが、渋滞内容がどう変化するのか国交省の実験結果により明らかになるでしょう。トラック事業者の配車マンは、納品時間を守る為、出発時刻、運行ルートに気を使っています。今後は、渋滞を予測してのドライバーの早出も必要になるかもしれません。その場合は人件費増に繋がってしまいます。

サンデードライバーの高速道路の利用

無料化になれば今迄高速を使わなかったドライバーが高速に入ってくるのではないか思われます。トラック各事業者においては、ドライバーに対して、今迄以上に防衛運転に関する教育・訓練や意識づけが必要と思われます。

時事通信社の世論調査(10月17日)では、民主党が衆院選マニフェストに掲げた主要政策のうち、反対が最も多数を占めたのは「高速道路の無料化」の50.3%でした。世論もありますが、国民に約束した以上、その内容はどうであれ実施されると思われます。トラック業界は、デメリットの方が多そうですが、今後ともその動向に注視していく必要がありそうです。

(文責:藤原)

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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第54号 2009年10月28日)

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