オープンイノベーションには2パターンがある
オープンイノベーションには、大別して自由参加のコンソーシアム型と、戦略的提携型の2パターンがあるというのが一般的です。
前者は、複数の組織が異なる分野の知見を持ち寄って新しい技術を創造し、そこで得られた成果は皆で享受するという考え方です。これに対し、後者は事業化や実利を求めるうえでは前者より有効で、明確な主体者(事業をやりたい企業)が明確な目的を持ち、その目的達成のために必要な資産や技術を持つ組織を見つけ出して協業することで、M&Aにみられるような1つの企業が中心となって、自社のメリットを追求するという意味では、コンソーシアム型とは根本的に異なる仕組みです。
大きな課題を抱える物流業界ですが、3大テクノロジー(AI、ビッグデータ、IoT)による新たなソリューションが期待され、国土交通省はじめ行政側も積極的な政策的支援を実行しつつあります。しかし、何よりも企業間もしくは産学官連携等によるオープンイノベーションによって生み出される知恵に期待が集まっているのではないでしょうか。
シンガポールから見た日本企業
オープンイノベーション先進国として世界が注目している地域のひとつにシンガポールがあります。同国で新たな知恵の創出をリードする「シンガポール科学技術研究庁(A*Star=Agency for Science, Technology and Research)」のマネージャーのインタビュー記事を目にして、大変興味を持ちました。
同マネージャーによれば、日系企業にはオープンマインドな人材が多く、技術的なリーダーシップに加えて、マーケティング等にも積極的に関与できるCTOも少なくないが、オープンイノベーションはまだ日本国内に閉じられていることが多いのだとしています。また、イノベーションは日本で起こして海外に展開する、というやり方を続けてきたことが背景にあるのだと考えられ、そのため、日本の外でイノベーションを起こして、それをグローバルに展開するやり方にはまだ慣れていないのではないかと言うのです。
さらに、日系企業はもっと機会に貪欲になるべきで、まずは行動癖から変えるべきとし、例えば、日系企業の多くは、A*Starを訪問するのに、1か月前からアポを取って申し込んでくれるが、他の国のビジネスパーソンは、その日の朝電話をかけてきて、「今、シンガポールに来ているが、今日の昼会えるか?」といったように積極的にどんどんアプローチしてくるという軽快さやフランクさが大事なマインドセットだと指摘しています。
最も興味を引いたコメントは次の内容でした。
私は、オープンイノベーションの目的は、新しい知恵を生み出すことだと考えている。(どんな新しい知恵を生み出したいのか?という問いに対して)どんな知恵を生み出したいのかはわからない。わからない知恵を生み出すからイノベーションであって、わかっていたらイノベーションではない。イノベーションとは我々の知らない世界を創ることだ。例えば、かつてインターネットがもたらす技術は誰も知らず、想像することさえ出来なかったはずだ。しかし、インターネットが出現したことで、様々な知恵が生まれ新しい世界が創られた。つまり、何か分からないものが出てきたときに、古い仕組みを壊し、新しい世界を創るという世界観が求められるのだ。イノベーションを計画するという発想は捨てるべきである。
労働力不足、高齢化、賃金水準、労働環境等々、物流業界の抱えている問題は、途方もなく出口の見えない暗闇に感じることすらあります。しかし、先の3大テクノロジーが出現している中、あらゆる枠を超えたオープンイノベーションが活発になることで、かつて想像もできなかったようなイノベーションが創出されるかもしれません。私どもも、難題を抱える今だからこそ知恵を振り絞り、新たなソリューションを構築したいと日々奮闘しています。
読者の中に、同じ想いを共有し、オープンマインドで語り合う機会をお持ち頂ける方がおられれば、いつでもご連絡をお待ちしております。
(文責:貞 勝利)
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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第384号 2018年7月4日)