職場での熱中症の死者は10年間で2.6倍にも
540号を担当いたします山田です。暑い日が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
年々暑さが厳しくなり、2023年夏(6~8月)の平均気温は過去30年間(1991年~2020年)の平均値と比べて1.76℃も高かったようです。長期的にみると100年あたり1.25℃の割合で上昇しているそうですが、「暑い夏」というと心配になるのはやはり熱中症です。
厚生労働省が公表した「令和5年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」によると、2023年の熱中症による死傷者数(死亡・休業4日以上)は1,106名(内死亡者31名)でした。これは過去10年間(2014年~2023年)の中で、2018年の1,178名に次いで多い人数です。2014年の423名に比べると約2.6倍に増加しており、下図からも熱中症による死傷者数が増加傾向にあることが分かります。
運送業の熱中症死は全体の14%を占めている
また、業種別にみると、過去5年間(2019年~2023年)の熱中症による死傷者数のうち、運送業は約14%を占めています。死傷者数583名と、決して少ない人数ではありません。
このままでは熱中症による死傷者は増加し続けていくことが推測されますので、これまで以上に熱中症対策に力を入れていく必要があります。
熱中症の発生リスクをはかる指標として、「暑さ指数(Wet-Bulb Globe Temperature)」があります。暑さ指数は、気温だけでなく湿度、放射熱、風速を加味した指標で、暑さ指数計で測ることができます。下表の暑さ指数は、既往歴がない健康な成年男性を基準に、それ以下の暑熱環境にばく露されてもほとんどの者が熱中症を発症する危険のないレベルに相当するものとして設定されています。
物流事業者でいえば、倉庫内作業は多くの場合は区分2に該当しますので、熱中症を予防するためには、暑さ指数を26℃~28℃以下に抑えなければなりません。
暑さ指数を下げるためには、空調の整備が有効です。倉庫内全体を快適な環境にするのが難しい場合は、スポットクーラーなどを設置し作業者が涼める場所を設けたり、作業時間を短縮して適度に休憩を取れる環境を整えたりすると良いでしょう。
1Fバース付近は要注意!
また、倉庫は外気の影響を受けやすいので、定期的に暑さ指数を測定することが重要です。特に1Fバース付近など、ほとんど屋外と同じ環境になる場所は、こまめに測定することが望ましいです。エリア別で測定頻度を決めておき、ルーティン業務に組み込むと良いでしょう。
熱中症の予防においては、個人の健康管理も忘れてはなりません。栄養不足や睡眠不足など、体調が万全でない状態では熱中症の発症リスクが高くなります。朝礼時に作業者の体調を確認している方も多いかと思いますが、形骸化しないよう注意が必要です。本来の目的を忘れず、作業者が自分の体調を気軽に報告できるような雰囲気づくりを心掛けて行うと良いでしょう。また、ウォーターサーバーを設置したり、塩分タブレットを配布したりといった脱水症状の対策も熱中症の予防には有効です。
熱中症対策については、厚生労働省や環境省のHPから詳しい情報を得ることができます。対策を検討する際は、ぜひ閲覧してみてください。
これからまだまだ暑くなることが予想されます。十分な熱中症対策を行い、死傷者数ゼロを目指しましょう。
(文責:山田 沙矢)
参考資料
- 気象庁.「日本の季節平均気温」
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/sum_jpn.html (参照2024.6.14)
- 厚生労働省.「令和5年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001214535.pdf (参照2024.6.14)
- 厚生労働省.「暑さ指数について」
https://neccyusho.mhlw.go.jp/heat_index/ (参照2024.6.14)
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