ドローン物流の現状と今後について 

529号を担当いたします中澤です。 

2024年度から運送業の時間外労働の上限規制が変更され、物流の滞りなどが指摘されるいわゆる「物流の2024年問題」に直面しています。本稿では、今後の物流のあり方のひとつとして注目されている「ドローン物流」をご紹介します。 

1.ドローン物流とは 

ドローン物流とは、ドローン(無人航空機)を利用して貨物や荷物を運送することを指します。従来の陸上輸送や海上輸送とは異なり、空中を飛行することで物流業務を行います。ドローン物流は、高い機動性や迅速な配達が可能であり、特に遠隔地や交通が混雑する都市部などで利用されることが期待されています。 

2.ドローン物流が解決する物流課題 

・交通渋滞の緩和 

 運ぶ貨物の量や回数が増えるとトラック数も増加し、交通渋滞が起こりやすくなります。とくに都市部においては慢性的な交通渋滞が発生しやすく、配達の遅延につながりやすい環境にあります。そうした中でドローンは、上空を飛行するため交通渋滞とは無関係であり、物流トラックの走行台数を減らし交通渋滞の緩和につながることが期待されています。 

・ドライバー不足の解消 

 少子高齢化や物流の担い手不足だけでなく、ECの普及で宅配ニーズが増加したことを背景に、ドライバー不足が深刻化しています。さらに、冒頭で述べた通り、2024年4月以降は自動車運転業務の時間外労働に上限規制が変更されたことで、さらなる人手不足が起こる恐れがあります。そうした中でドローンによって無人配送することで、ドライバーの人手不足が解消することが期待されています。 

3.ドローン物流の課題 

・飛行時間と運搬能力 

現在のドローン技術では、1回の飛行で運搬できる荷物の量や重さに制限があり、大きな荷物や長距離の配送を行うには、より大型・高性能なドローンが必要です。 

・気象条件への対応 

悪天候や風の影響を受けやすい状況下においては、ドローンの安全な運航が難しいです。特に雨や強風などの天候条件下における運航が課題です。 

・法規制と空域管理 

ドローンの運航には法規制が必要となり、同時に航空法や地域の規制を遵守することが必要です。また、空域管理や航空交通管制との連携が必要です。 

・プライバシーとセキュリティ管理 

ドローンの飛行により、プライバシーの侵害やセキュリティ上のリスクが懸念されており、個人情報や機密情報の保護、不正利用や衝突事故の防止などが重要な課題です。 

・バッテリー寿命と充電インフラ 

ドローンの飛行時間はバッテリーの寿命に依存しており、長時間の連続運航や大量配送を行う場合、バッテリー交換や充電インフラの整備が必要です。 

・人材と技術の確保 

ドローン物流を運営・管理するためには、専門の人材や高度な技術が必要なため、人材の育成や技術の開発が課題です。 

4. ドローン配送の実用化に向けた動きと現状 

・改正航空法の施行 

 2022年12月5日より航空法が改正され、有人地帯での目視外飛行「レベル4飛行」が可能となりました。国土交通省「無人航空機レベル4飛行ポータルサイト」では、ドローン飛行のレベルを下記の通り示しています。 

  • レベル1:目視内で操縦飛行 
  • レベル2:目視内で自律飛行 
  • レベル3:無人地帯での目視外飛行 
  • レベル4:有人地帯での目視外飛行 

・ドローン配送のガイドラインを制定 

2023年3月に国土交通省が公表した「ドローンを活用した荷物等配送に関するガイドライン Ver.4.0」は、改正航空法の施行やドローン配送の社会実装推進の流れに合わせて改定されました。このガイドラインでは、レベル4飛行も対象となったことに加え、ドローン配送の導入方法や手続きに関する情報が整理されており、過去のガイドラインに加えて事例集やさまざまな事例をもとに、ドローン物流の社会実装に関する具体的な内容の追記、修正が含まれています。 

5.日本におけるドローン物流導入に向けた取り組み 

・事例1 

長野県伊那市では、山間部の集落における買い物困難者やコミュニティの弱体化といった地域課題に対応するため、「ゆうあいマーケット」というスマートドローンを活用した取り組みが事業化されました。このシステムでは、ケーブルテレビ画面や電話で商品を注文すると、ドローンが配送拠点から地元スーパーの商品を集落内にある公民館に配送し、そこからのラストワンマイル配送はボランティアの手で利用者まで直接商品を届ける仕組みが構築されています。この取り組みは、買い物困難者の支援に加えて、高齢者の見守りや地域コミュニティの強化にも役立っています。 

・事例2 

日本郵便株式会社は、2023年3月24日に東京都奥多摩町でドローン配送の実証実験を行いました。この実験は、奥多摩郵便局から山間部の住宅まで重さ約1kgの荷物を届け、同一経路で戻るという内容で、日本初のレベル4飛行に成功しました。着陸したドローンは、自動で荷物を機体から切り離すことができ、実験では約9kmの飛行距離を約18分で往復し、過去のレベル3実験よりも飛行距離を伸ばし時間を短縮することに成功しました。 

ドローン物流を本格的に社会実装するにはいくつかの課題が残りますが、日本国内を含め世界各地でドローン輸送の実証実験や実用化が進められています。今後、ドローンでの輸送が当たり前になる未来が来るのではないでしょうか。 

(文責:中澤 梓) 

(参考) 

(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第529号 2024年5月8日) 

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