物流の2024年問題の当事者は誰か~運送会社だけじゃない~

2024年問題、運送会社に対応を任せっきりでは・・・

 532号を担当いたします野澤です。

 「物流の2024年問題」の発端となった働き方改革関連法の改正が、2024年4月にトラックドライバーに適用されてから2か月が経ちました。

 「モノが運べなくなる!」と騒ぎになり、ニュースでも物流の話題が多く取り上げられました。報道は落ち着いてきましたが、むしろこれからが各企業で諸問題が表面化してくる時期と推測しています。つまり輸送力不足の根本的解決には至っていないため、対策の検討を続ける必要があるということです。

 そのような状況で、具体的な対応は運送会社が主体となっていないでしょうか。例えばトラックの積載率向上、パレット導入、時間外労働の削減、乗務員の待遇改善や中継輸送が挙げられます。料金改定も進んでいるとは思いますが、基本的に運送会社がお願いする形だと思います。 しかし物流の2024年問題に対しては、運送会社だけではなく物流を取り巻く関係者全員で取り組んでいかなければいけません。問題なのは、運送会社が荷主企業より立場が弱いことです。そのため無理な要求や安い賃金を強いられてしまうことが常態化してしまっています。なぜこのような上下関係が発生してしまっているのでしょうか。

 製品が製造されてから消費者の手に届くところまでを簡単に図示すると、以下のようになります。

図1 モノの流れ(販売物流)

物流の力関係は変化しうる

一般的に、貨物を輸送させている事業者を荷主と呼びます。さらに貨物を送る側を発荷主、貨物を受け取る側を着荷主と区分されます。図1では、卸売事業者が発荷主となり、小売事業者が着荷主となります。

 物流機能のキャパシティが「需要<供給」の現状では、力関係が「小売>卸売>運送会社」つまり「着荷主>発荷主>運送」となっていると考えています。

 発荷主(卸売)の視点だと、着荷主(小売)は言うなればお客様です。運送会社から見た着荷主も同様です。着荷主からすれば、納品されればどの発荷主もしくは運送会社でも構わないと考えるため、力関係が着荷主有利となります。この「代わりがいる」状態になった原因は1990年に制定された物流二法による規制緩和で、運送会社の数が大幅に増加したことなどが挙げられます。

 しかし、2024年問題に象徴される法改正や人手不足を契機に「需要>供給」となった場合、この力関係は変化すると考えられます。共通の目的に向かって協力する対等な関係、つまり「着荷主=発荷主=運送会社」になると考えています。

 変化に対する荷主のアクションとして考えられる例は、一気通貫料金ではなく作業ごとに細分化された料金体制の整備、配送頻度の見直し、ケースサイズの統一といったものがあります。これまで荷主からの無理難題をサービスとして実現してきた運送会社が、そういったアクションを取る荷主に移行することが起きうるかもしれません。

 ただ、一様に運送会社が以前と比較して有利になるわけでもないでしょう。全国の運送会社60,000社弱のうち、ブラックなゾンビ企業は淘汰され、業界再編が進むと考えられます。今後数年は運送会社だけでなく、荷主側の企業も変容する物流業界を注視する必要があります。

(文責:野澤 朋矢)

【参考文献】

荷主とは | 輸送の省エネ法規制 | 事業者向け省エネ関連情報 | 省エネポータルサイト (meti.go.jp)
「卸売市場の仲卸業者等と小売業者との間における生鮮食料品等の取引の適正化に関するガイドライン」の策定について:農林水産省 (maff.go.jp)

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