前稿では、新コースの試走検証実施および関係者との最終調整についてお伝えしました。
本稿では、物流改革における既存輸送事業者との調整/交渉についてご紹介します。
既存輸送事業者との調整が鍵
これまで、コース集約に向けた設計のポイントなどを説明してきましたが、コースを集約するということは、コースが減ることになります。荷主側とすればコスト削減ですが、既存輸送事業者にとっては売上減少に直結します。そのことを念頭に置いて、荷主としてどのようなアクションをするかを考えなければなりません。
物流改革を成功に導くためには、実際に輸送を担う既存輸送事業者の理解と協力が必要不可欠となります。既存輸送事業者の立場にたって考え、どのような準備が必要か整理した上で、順序立てて進めていく必要があります。
まずは、既存輸送事業者に対して「説明会」を実施することをお勧めします。
説明会は、物流改革の全体像を事前に共有する目的でおこないますが、荷主としての想いや熱意を伝える場でもあります。しっかり想いが届くように、物流改革が必要になった背景や、やりたいこと、協力してほしい内容等、熱意をもって説明することが望ましいです。そのうえで、コース集約の規模感や想定しているスケジュールなどを説明します。
なお、説明会の実施はできる限り早く実施することが重要です。コース集約の規模にもよりますが、場合によっては、既存輸送事業者がドライバーの解雇や車両の売却等を迫られる可能性も考えられるため、十分な期間が必要となります。私としては最低でも3か月の猶予は必要と考えております。(3か月前通知)
個別交渉の準備も入念に
次は既存輸送事業者との「個別交渉」です。事前に既存輸送事業者別に物流改革の影響度(コストシミュレーション)を明らかにし、影響度を踏まえた上で交渉条件、内容を整理しておきます。整理の手段として、話の展開、受け手の質問、それに対する回答などをフローチャートにまとめたスクリプトの作成がおすすめです。
場合によっては、複数回の交渉が必要になることもありますが、粘り強く交渉することが大切です。既存輸送事業者は想像されている以上に荷主側の姿勢を見ています。調整/交渉には「熱意」が必要不可欠な要素だと考えています。
最後に、「最終調整」です。個別交渉を経ても、落としどころの調整が必要になることがあります。コースの減少により大幅な売上減少に陥る場合などは、部分的に稼働時期を遅らせる、料金を改定する、付帯料金の見直す、件数割増等を新設する等の対策を講じます。弊社の支援実績の中では、大幅なコース集約が実現できたことで、その一部の削減額を運賃割増分に割り振り、長年手を付けていなかった料金体系を見直した事例があります。
物流改革において、コスト削減の効果を求めるにあたり、既存輸送事業者対しての対応が十分ではないことがありますが、重要な共同パートナーとして、しっかりした説明を行い、既存輸送事業者の声も聞いた中で、進めていくことが大切だと考えています。
いかがでしたでしょうか。調整/交渉ごとには正解はないと思いますが、一つの事例として参考にしていただければ幸いです。
次回は「立上げおよびコースの最終調整について」取り上げたいと思います。
(文責:南部 大志)
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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第 497号 2023年2月8日)
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