今回は、有意義なレイアウト調査をするためのポイントを、事例を交えて紹介していきたいと思います。
荷主のニーズに合った検討
先日我々は、A社から物流コスト削減のためのコンサルティングの依頼を受けました。物流コンサルティングを行う際に非常に肝心なことは、荷主のニーズを正確に受け取り、そのニーズに沿った物流改善提案を図ることです。また、改善効果を高めるためには、荷主の現状を把握し、大きな効果の見込める策を講じることが必要でしょう。
では、A社のケースで考えてみましょう。
A社のニーズは、「物流コストの削減」です。物流コスト削減を実現するためには様々な策が考えられますが、A社の現状からどのような策が最優先されるべきなのかを考えます。我々は、A社の現状を調査していく上で、工場の外部倉庫が2棟あることに着目しました。その内の1棟を場内倉庫に取り込むことができれば、大幅なコスト削減に繋がります。
そこで、外部倉庫1棟分の取り込みを目標に、
(1)場内倉庫の現有保管スペースの保管効率アップ
(2)新しい保管スペースの創造
という課題を掲げ、物流コストの削減効果を検証することにしました。
以上の課題を解決するためには、設備の更新/導入及びレイアウトの変更により、保管方法の改善を図るという方案を考えました。この保管方法の改善対策を講じるためには、事前のレイアウト調査を行うことが必要です。
次節では、このレイアウト調査の仕方や調査内容について、考察していきたいと思います。
検討に基づくレイアウト調査
調査を行うに当たって、まず調査の目的を明確にする必要があります。前述したように、A社のレイアウト調査については、二つの課題を解決するためであり、目的は次の2点についての検証を挙げました。
1.現有保管スペースの保管効率アップの可能性。
2.新しい保管スペースを作り出す可能性。
以上の目的を念頭に置き、下記に挙げる調査ポイントに基づいて調査を実施しました。
ポイント1 現有スペースの利用状況
平面上の空きスペース
本来倉庫は、保管スペースが最大限に利用され、無駄な空きスペースがゼロである状態を保つことが理想的です。実際には、完全に空きスペースを無くすことは難しいのですが、いかに理想的な状態へ近づけるか、という視点に立って調査を進めていきます。
A社の場内倉庫には、空きスペースの割合が、現状保管スペースの約1/4を占めている所も見受けられました。しかしながら、この工場では生産品を入荷するためのスペースとして、一時的な空きスペースの発生はやむを得ない事情があることも、ヒアリングから明らかになりました。こういった荷主の事情を踏まえて、削減可能な空きスペースを調査することが大切です。
空間の利用
床面積が最大限利用されているかの検証は、保管効率アップに欠かせない着眼点の1つですが、高さの有効利用も無視できないポイントです。
今回のA社のケースでは、高さは十分に利用されていましたので、特に調査は行いませんでした。別案件での例を挙げますと、床の積載荷重に制限があったためにフォークリフトの導入が出来ず、段積みの高さに制限を受けていた倉庫もありました。この案件において、保管効率を最優先課題として対策を講じるならば、重量のないハンドリフトを使用することで高さに対応するなど考えられます。
このように、最優先課題を実現するのに妨げとなっている制約条件を明確にし、対応策を考えていくことが必要です。
以上のように、荷主の実状を踏まえた上での調査が、我々の追求するレイアウト調査です。
ポイント2 スペース創造の可能性
非保管スペースの削減
庫内は大きく分けると、保管スペース,作業スペース,仮置きスペース,通路などのスペースから構成されています。非保管スペースの削減により、保管スペースの拡大が図れます。
以下では、非保管スペースごとの調査ポイントを挙げていきます。
1)作業スペース
同一倉庫に保管スペースと作業スペースが共存する場合は、作業スペースを他へ移せるかどうかを検討します。
A社のケースでは、保管スペースであるべきはずの倉庫内の大半が、検品を行うための作業スペースで占領されていました。ここで、作業スペースを生産工場に設置された生産スペースに移すことで、大幅な保管スペースの拡大を図ることが可能になります。
2)仮置きスペース
仮置きスペースとは、入出荷などの際に、一時的に製品を置く場所のことです。一定面積の仮置きスペースは、作業効率を高めるために必要でしょう。けれども、多くの場合は、スペースを余計に取り過ぎているために、移動や運搬距離が伸びるなど逆に作業効率を落とす無駄なスペースになってしまっているようです。
3)通路
手作業やリフト作業などの作業方式により、必要な通路幅が異なります。さらに、同じリフト作業と言っても、使用するフォークリフトの種類によって、必要な通路の幅も異なります。
A社の場合は、現状ではカウンターバランス式フォークリフトを使用しているため、通路幅に費やすスペースが広く取られていました。これを、小回りの利くリーチリフトに変更することで、現状と比較して、約1パレット分ほどの通路幅を削減することが可能になります。
設備の投入
製品の出荷特性により、端数品が発生することがあります。パレット上の保管空間を最大限利用するためには、各端数品を1パレットに集約することが考えられます。しかしながら、どうしても山欠けロス(パレタイズの状態から出荷により生じる空間の無駄)が発生し易くなってしまいます。そこで、ネステナーを使用することで、高さの有効利用を図り、保管スペース拡大の可能性を検証します。
A社のケースを見てみます。まず、端数品の集約により山かけロスが減少し、保管スペースが増加します。さらに、新たに発生した端数品集約パレットの山かけロスには、ネステナーの投入により高さの有効利用が可能になります。
このように、全体的な視点に立ち、関連理論知識や経験知を総動員させて調査を行うこと
が重要です。
ポイント3 製品の特性に基づく保管方法
(1)不良品/長期滞留品の処分
不良品や長期滞留品をいつまでも抱えていても、何のメリットもありません。それどころか、かえって様々な損失を生み出すことになるでしょう。特に、保管スペースが無闇に占用されている状態は、保管効率の面から考えると非常に非効率的です。
A社の場内倉庫の中には、1年以上の滞留品が倉庫在庫の約2割を占めている所があることが分かりました。このような滞留品は、速やかに処分することが先決だといえるでしょう。
(2)ABC分析を実施した上でのランク別保管状況
ある文献では、ABC分析を行う理由を、「重点的に管理する製品を明確にするため」と説明しています。裏を返せば、ABC分析によって、作業効率を無視しても支障がない製品も明確になるわけです。それらの保管方法を、例えば通路幅を設けず、かつ製品区別もせずに奥行き保管をするなどの様に変更するだけでも、保管効率はアップします(もちろん在庫の所在管理は必須です)。
そのため、ABC分析を保管効率アップの観点から行う時には、Cランク品の在庫量,在庫期間,保管位置などに注目することも重要になります。
以上より、効果的な調査を実現するためには、事前データ分析を行うことが重要だといえます。
※ABC分析についてはこちら
まとめ
以上で見てきたように、レイアウト調査実施に当たってのポイントは、
1.荷主の実状を踏まえること
2.全体的な視点に立ち、関連理論知識や経験知を総動員させて調査を行うこと
3.事前データ分析を行うこと
だと考えます。
調査を行うということは、そのための費用が発生するということです。コスト削減のための調査で、余計な費用がかかったら元も子もありません。このことからも、前述したようなポイントに従った、効率的な調査が望まれているのです。
調査目的と現場の実状を明確にし、調査によって得られる効果を高めるような、効率的な調査を心掛けたいものです。
我々ロジ・ソリューションのコンサルタントメンバーは、理論的知識はもちろんのこと、今回紹介したとおり実践での経験も豊富です。今後も、荷主のニーズを満たすために、より効率良く、より大きな成果を出せる調査を行っていきたいと思います。
(文責:林・小出)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★掲載された記事の内容を許可なく転載することはご遠慮ください。
ロジ・ソリューションでは、物流に関するいろいろなご支援をさせていただいております。
何かお困りのことがありましたらぜひお声掛けください。(お問い合わせはこちら)