確かに排気ガスは綺麗になりましたが
自動車の排出ガス規制の最新版である「ポスト新長期規制」の施行に伴い、トラックメーカー各社は、最新規制に適合した車両を市販してきております。某メーカーの担当者に話を聞く機会があり、「これらのトラックの排出ガスは、極論、工業地帯の大気よりもクリーンであり、走る空気清浄機になっている」との事でした。
輸配送事業者は、これらの車両を購入する事となりますが、一番のメリットは、何と言っても、環境(特に大気汚染)に対する悪いイメージが払拭されて来ている事ではないでしょうか。 約10年前は黒煙を撒き散らして走るトラックを多く見かけましたが、近頃は、全く見かけなくなりました。
…と、私たちを取り巻く生活環境へのメリットは周知の事と思われますが、その一方で、これらの車両を製造するメーカーや、実際に導入するユーザー、即ちトラック事業者は、多少なりともデメリットによる影響を受けているのも事実です。
具体的に、どのようなデメリットがあるのか、「車両価格(コスト)」の面と、「最大積載量」の面で、紐解いてみたいと思います。
車両価格は
まず、車両価格についてですが、最新規制に適合した車両は、約10年前の規制車両に比べ、大型車(増トン車)で約2.3百万円、中型車(4トン車)で約1.5百万円上昇しています。主な要因として、一つは、排出ガスをクリーンなものとするための装置(酸化触媒、DPF装置等)が装備された事により、その分が価格に転嫁されています。
もう一つは、若干話は逸れますが、国が定める燃費基準をクリアするために、小排気量エンジンをベースに過給機(ターボ)を装着した事により、価格上昇を引き起こしています。仮にボディ架装済み大型車を13百万円、同中型車を7百万円 とすると、大型車で約21%、中型車で約27%の価格上昇率であり、輸配送事業者としては無視できない金額に相当します。
最大積載量は
次に、最大積載量についてですが、最新規制に適合した車両と、約10年前の規制以降の車両におけるシャーシ質量を比較してみると、大型車で最大約200kg、中型車で同約150kg増加しています。主な要因としては、車両価格の所で 述べた各種装置類の装備によるものと考えられます。これらの質量アップは、そのまま最大積載量に影響を及ぼす事となり、「従来、1車で運べていた物量が運べない…」といった現象を目の当たりにするケースもあります。
以上から、輸配送事業者にとっては、排出ガス規制に伴う車両代替えにより、前述のメリットと共に、車両価格の面では「増コスト」、最大積載量の面では「減収」といったデメリットも背負わざるを得ない状況です。
国内の物流業界は、コスト負担力が強いとは言い難い中小の物流事業者が大半を占めています。現状、これらのデメリットは、その大半を輸配送事 業者が背負っている状況であると考えられます。 輸配送事業者を取り巻く国・自治体、トラックメーカー、顧客(荷主)におかれましては、このような一面がある事を認識して頂くと共に、時には、それぞれの立場で輸配送事業者へのデメリットを現状よりもさらに緩和させる方策などあっても 良いのではないでしょうか。
(文責:浅見)
<ご参考>
東京都トラック協会では会員向けに、『H23年度 低公害車の導入に関する補助事業』を推進(申請期日:平成24年 1月31日)しており、ポスト新長期規制適合車両も補助対象となっております。
※東京都以外の地方トラック協会でも、同様な助成事業を行っている場合がありますので、最寄りの協会窓口までお問い合わせ下さい。
<備考>
・本内容は、トラックメーカーのヒアリングに基づきます。
・文中の価格、諸元は代表的な車型によるものです。
<参照>
一般社団法人東京都トラック協会 平成23年度 低公害車の導入に関する補助事業実施要領
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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第156号 2012年1月18日)