年度輸送量が3,000万トンキロ以上の特定荷主には環境対策が義務付けられている
ペットを飼っている方にはご理解頂けると思いますが、家で留守番をさせている時は一日中エアコンを付け部屋を適温に保っています。飼う前は考えもしませんでしたが、電気代も4割くらい上がってしまいました。電気代と共に気になるのは、二酸化炭素排出量でしょうか・・? 普段の生活では気にならないと思いますが、企業レベルだとCSR(企業の社会的責任)に係わってくる無視できない問題です。
1997年の京都議定書の採択を受け、環境対策の必要性は運輸部門にも広がりました。日本の温室効果ガスの約9割が二酸化炭素であり、その内約2割が運輸業に由来しています。つまり、運輸部門のCO2排出量に伴う影響度は大きいのです。
そして、年度輸送量が3,000万トンキロ以上となる特定荷主においては、環境対策への取り組み義務が発生しています。企業における環境対応の重要性はますます高まる方向にありますが、物流を外部委託している荷主企業にとって、「定期報告書」や「計画書」の作成、環境データの正確な把握は簡単なことではないと思います。
何をしなければいけないか
今回は、特定荷主に課せられた義務の内容と、環境データの扱い方について見直してみます。
経済産業省へ提出する「定期報告書」・「計画書」の作成
特定荷主は毎年6月末頃に経産省へ以下の資料を提出する必要があります。また、過去5年間の平均でエネルギー使用原単位を1%以上改善する目標が課せられます。
提出資料
(1)定期報告書
-輸送に係るエネルギー使用量(原油換算値[kl])
-エネルギー使用原単位
-省エネ措置の実施状況
-エネルギーの使用に伴う二酸化炭素の排出量
(2)計画書
-対策テーマ別の計画内容とエネルギー使用合理化期待効果(原油換算値[kl])
何れも、経産省から提供される作成ガイドラインと作成ツールを用いて作成することになります。該当数値を入力していくのですが、この数値・データの作成に苦労されるのではないでしょうか。まずは自社の把握すべき数値を知ることが大切です。
低減目標値であるエネルギー使用原単位の算定には、エネルギー使用量が必要となります。このエネルギー使用量の算定方法によって、把握すべき数値は変わってきます。
エネルギー使用量の算定方法と必要データ
a.燃料法:実際に消費した燃油使用量から算定する、最も精度の高い算定法
b.燃費法:輸送距離と燃費から算定する算定法
c.改良トンキロ法:積載率、燃料種類、最大積載量、輸送トンキロから算定する算定法
d.従来トンキロ法:トラック以外の輸送機関別(内航、鉄道、空港)の輸送トンキロから算定する算定法
エネルギー算定に必要なデータが用意できるかという点から、使用する算定方法が決まります。輸配送を外部委託している場合や、共同配送などを実施している場合は、a.b.の算定法で必要な数値(燃油使用量、燃費)の把握は難しく、c.の改良トンキロ法を使用するケースも多いのではないでしょうか。何れの算定方法を使用するにしても、日々の輸送実績を蓄積していくことが大切です。
次回は、エネルギー使用原単位の低減策について考えてみます。
(文責:小出 貴美)
参考文献
・国土交通省における地球温暖化対策について【概要】
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_tk_000006.html
(国土交通省)
・日本の温室効果ガス排出量の算定結果
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg/(環境省)
・省エネ法(荷主に係る措置)について
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/ninushi/document.html
(経済産業省 資源エネルギー庁)
・物流分野のCO2排出量に関する算定方法ガイドラインhttps://www.greenpartnership.jp/co2brochure.pdf(経済産業省・国土交通省)
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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第317号 2016年3月9日)