求められる労働力不足への対策
雇い入れる賃金を上げても物流業界に労働者が集まらない状況の中で、物流センターにおける労働力不足は深刻化してきています。物流事業者のみならず荷主サイドの製造業・小売業では、物流センターを新設、もしくは移転する際には、いかに労働力を確保できるかを第一として計画を立てる場合が多くなってきています。
アスクルは福岡県福岡市に新設した「ASKUL Logi PARK福岡」を2015年12月30日から稼働させています。
それまでは福岡県糟屋郡の「アスクル福岡センター」を利用していました。2016年に筆者は現地に赴き、移転させた理由を伺いました。
人員確保には住居地の近くに物流センターを建設
それまでの物流施設「アスクル福岡センター」の拡充を主目的に「ASKUL Logi PARK福岡」を福岡市東区(福岡アイランドシティ)に新センターを設立、その延床面積は約5万4842m2と福岡センターの約2倍の広さです。立地面では、博多港、福岡空港、博多駅、福岡インター、JR貨物など、陸海空の交通連結点が半径10km以内に集積するなど物流施設として好適な立地で、法人向け事業のみならず、今後のアスクルのビジネス拡大を視野にその機能拡張に余地を残しているとのことです。
交通アクセスを考慮してセンター拠点立地を探すのは当然ですが、福岡アイランドシティに建設したのはもう一つの目的があります。福岡アイランドシティには二つのエリアがあり、「まちづくりエリア(192ha)」と「みなとづくりエリア(210ha)」に分かれています。ASKUL Logi PARK福岡は「みなとづくりエリア」に位置しています。この二つのエリアは道路を挟んで隣接しており、新興住宅地の「まちづくりエリア」から、パート・アルバイトの労働力を得る目論見で福岡アイランドシティを選択しました。
簡易的な物流センター最適立地シミュレーション
ASKULの拠点立地選定は、交通アクセス+労働者確保の両方を解決させたすばらしい事例ですが、新拠点もしくは統合拠点をどこに建てればよいかは、まずは配送拠点としてコスト最適なのかどうかをみることが多いです。日本ロジスティクス協会の「2016年度 物流コスト調査報告書」によると、輸送、補完、包装、荷役、物流管理のうち、配送コスト(支払物流費+自家物流費)の占める割合が55.7%と最も高くなっています。
配送コストが最小となる物流センターの最適立地は、一般的に需要地近隣を選定したほうが望ましく、その判断手法の一つとしてトンキロ最小法があります。トンキロ最小法とは配送ネットワークにおける候補拠点のなかで、物量(t)×配送距離(km)の合計(Σ総トンキロ)が最小となる立地地点を選定することで、配送コストが最小化するという考え方です。
筆者が欧州の物流事業者選定コンサルティングを実施した際には、3PL(Third Party Logistics)プロバイダー3社が、配送コストを考慮した提案拠点であることを、このトンキロ最小法で示していました。トンキロ最小法は1拠点の立地場所を選定する場合には、簡易的に利用できるメリットがありますが、問題点として複数拠点を同時に選定する場合に使用することが難しくなります。
(文責:釜屋 大和)
複数拠点を選定する場合には、専用のシミュレーションツールを利用することになりますが、弊社では多くのお客様にシミュレーションツールを用いたコンサルティング・サービスを提供させていただいております。お気軽にご相談ください。(お問い合せはこちら)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★掲載された記事の内容を許可なく転載することはご遠慮ください。
(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第386号 2018年8月1日)