自動配車システムと人間の手直し

 現在、市場にはいくつかの『自動配車システム』がありますが、それらの実運用での導入事例では「システムが出力した配車結果を元に人間が『手直し』をしている」とよく聞きます。

極端な例で試してみます。
ある自動配車システムにて下記1の設定で自動配車をしたところ、2の結果が出力されました。

1)設定

・最大積載重量が3,200kgの4tトラックが2台います。速度、時間ともに関連法令を順守します。

・車庫、積込場所は共に東京都江戸川区で、1回の積込作業に30分を要します。

・全配送業務終了後、車庫まで戻ります。

・高速道路、有料道路は利用しません。

・本日は配送先が千葉県浦安市、市川市、船橋市、習志野市、千葉市美浜区、千葉市中央区、市原市、袖ケ浦市、東京都江東区の9件で、各配送先での納品可能時間はすべて9時から18時、納品物量はすべて300kg、各配送先での荷卸作業には30分要します。(配送先のうち、千葉県下8件は起点の東、東京都江東区は西に位置します。)

2)結果

・1台目
配送順 千葉県浦安市、袖ケ浦市、市原市、千葉市中央区、千葉市美浜区、習志野市、船橋市、市川市
走行距離 138km
拘束時間 約11.5時間

・2台目
配送順 東京都江東区
走行距離 15.1km
拘束時間 約2.1時間

 この配車結果、2台の走行距離と拘束時間の合計が他の組合せに比べて少ないので、数理的には『良い』と判断されます。『自動配車システム』はソフトごとにそれぞれのロジックがあり、そのロジックや出力結果についてはソフトごとに良し悪しを感じますが、共通しているのは、どのソフトも自らのロジックに従い、数理的に『良い』ものを出力するということです。

 ところで、あなたは上の配車結果について、どう思いますか? 『手直し』しようと思いますか?

 過去の業務経験より、この配車結果をそのままドライバーに指示すると、1台目のドライバーは2台目のドライバーと見比べ「あいつのルートはラクだ、不公平だ。」と、2台目のドライバーは1台目のドライバーと見比べ「あいつのルートは売上が多い、不公平だ。」と、各々言い始めるのではないでかと、私は思います。配車担当にとって円滑な職場運営は大事な業務です。そこには日々の配送効率とは別の価値基準が有り、その価値基準に鑑みると上の配車結果はドライバー間で不公平さが生じる為に『悪い』になります。私であれば、ドライバー間の業務負荷のバランス、ドライバーの個性といった価値基準に従い、自動配車システムが出力した『手直し』を行います。
 他方、自動配車システムが全く役に立たないわけではありません。数理的に『良い』結果を素早く計算してくれること、上の例であれば『最低2台は必要』という配車結果を出力してくれることは、配車担当の業務負荷を減らし、集車までのスピードアップを図れるものとして有効ではないかと思います。但し、計算ロジックや計算結果はソフトにより様々ですので、自らの業務や目的にあったソフトを見極めることが必要になります。

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 今回のお話はあくまで『現状の自動配車システム』についてです。今後の技術深耕に期待します。
 2016年3月、プロ囲碁棋士イ・セドル氏と人工知能AlphaGoとの対局が行われ、AlphaGoが4勝1敗で勝利しました。以前の囲碁AIはモンテカルロ木探索という膨大なシミュレーションから勝率の高い一手を選択する手法を取っていましたが、AlphaGoはディープラーニングと呼ばれる機械学習とモンテカルロ木探索を組み合せています。プロ将棋棋士の羽生義治氏はAlphaGoについて『読みに関しての無駄の省き方というか、引き算としての洗練のさせ方、将棋でいうと大局観のような人間的なアプローチが急速に進歩していますね。以前の計算量で精度の低さをカバーするといった足し算の世界とは変わったと感じました。』と語っています。
 もしかすると、自動配車システムもディープラーニングにより、『人間的な』配車結果を出力する時代が来るのかもしれません。他方、トラックの自動運転が実用化されると、その『人間的な』配車結果は不要になるかもしれませんが。

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(文責:松室 伊織)

【参考】
『AI時代が到来!将棋も産業もこう激変する』(東洋経済ONLINE 2016.11.9)
http://toyokeizai.net/articles/-/143382

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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第350号 2017年1月18日)

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