物流分野での国際力強化のための考察

2008年末に始まった世界的大不況や、少子化からくる今後の日本での人口減少(特に労働力人口の激減等)など、日本での物量業界にも直接的に影響がある事象がよく取り沙汰されています。貨物の流動量(物量)という観点のみで言うと、今後日本国内の物流市場は、高度成長期のように飛躍的な伸長を望むことはできず、むしろその全体規模は縮小していくと考えざるを得ません。
そのような経済状況の中で、物流事業者は国内物流のシェアの奪い合いだけで将来生き残っていくことは非常に厳しい状況となることは容易に想定できます。また、海外の物流においても日本を起点とした輸出入貨物の取扱い、いわゆるフォワーディング事業をやっているだけでは、輸出入量の拡大が望めない状況では今後の拡大はあり得ません。
大手の製造業や小売業では、国内市場の拡大が見込めない状況を脱出するために海外進出をして当該国のユーザーを相手にする企業が増えており、物流業においても当該国の国内物流事業に進出していくことが今後の重要な拡大戦略となると考えられます。そのためには、海外での物流事業のためのノウハウ・技術等の強化、つまり『国際力』の強化が必要となってきます。
そこで今回は、物流分野における『国際力』強化のためのポイントを、「ヒト・モノ・カネ・情報」という観点から、日本での事業運営と海外での事業運営で比較しながら整理して考察していきたいと考えます。

【日本での事業運営と海外での事業運営について比較表】


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1.ポイント-1(ヒト)
1)言語
海外での事業で最初に出てくる問題は言葉の問題です。日々の事業運営で日本語が使われることはなく、基本的には当該国の言語となります。ただ、ビジネス言語としてはいかなる国であっても「英語」は必須となります。

2)リスク
海外事業でのリスクとして、大きく分けて「カントリーリスク」と「事業リスク」があります。「カントリーリスク」とは、戦争、テロ、法令改変、事業の没収・国有化等の事業者ではコントロールできない当該国固有のリスクであり、その大きさは国よって大きな差があります。一方、「事業リスク」はその事業運営が商売として成立するかどうかのリスクであり、こちらは日本国内の事業運営においても存在します。

3)行政
日本で物流事業を営む場合、主たる管轄省庁は国土交通省となりますが、海外の場合、当然当該国によって異なるため、事前に十分な調査が必要となります。

4)法令
日本で物流事業を運営していく上では、当然ですが各種法令を遵守していくことが求められます。海外での運営についても同様ですが、その法令は各国様々です。実運営の際に法令の中身を熟知しておくことは当然ですが、顧客への提案・事業計画の段階でもその概要をしっかり把握して、法令遵守していくために必要な体制・コストを押さえておくことが必要になります。

5)従業員、6)労働組合、7)運営組織
物流事業で最も重要な資源である「ヒト」を、どのように配置してどのように運営していくかということは、非常に重要なポイントとなります。
物流センターの従業員構成を、最も効率的にしていくために運営体制は重要であり、さらに労働組合や人材派遣業についても当該国の事情をよく把握しておくことが必要になります。

2.ポイント-2(モノ)
1)土地
物流センターを計画する際にその立地というのは非常に重要なファクターとなります。大まかな立地を検討するのはある程度机上の検討でも可能ですが、実際の土地を選定する段階になると、不動産等の情報力がキーポイントとなります。当該国の不動産事情、市況、取得のステップ等を現地でしっかり把握することが求められます。これは倉庫の既存物件を賃借する場合も同様です。

2)倉庫建築
倉庫の建築に当たっては、大まかに企画・設計 → 倉庫建築 → 開業というステップを踏みますが、設計段階でのステップ、建築許可の申請、建築業者の選定、建築資材の調達等、日本での進め方と大きく異なることが考えられます。また、物流センターに求められる仕様も当該国の建築基準に縛られますので、そこをよく調査しながら進めていくことが必要です。

3)倉庫設備
設備の導入ついても当該国の事情をよく把握することが必要です。日本では当たり前の設備が当該国では非常に高価で、安価な労働力を使った方がコスト的にはメリットがある場合もあります。

4)トラック
トラックの仕様についても、取扱う貨物や当該国の事情をよく知っておく必要があります。

3.ポイント-3(カネ)
1)通貨
当該国での取引は、基本的に当該国の通貨で行われます。運営する現地法人または合弁会社単体では円との為替リスクはありませんが、日本の本体とのグループ決算や現金の送金に際しては為替リスクが伴います。当該国通貨の世界的な地位も為替リスクを検討する際は重要になります。

2)会計基準
現地での日常の経理、決算等は当該国の会計基準に準拠しなければなりません。基本的に国際会計基準に各国とも近づきつつありますが、やはり独特の基準もあり、そこには会計基準に熟知して経験を積んだ会計士が必要になります。

4.ポイント-4(情報)
1)情報システム
ITが目覚ましく発達した現在では、物流事業を運営するのに情報システムを切り離すことはできません。物流センターを運営するにあたって、最低でも倉庫システム、輸送システム、会計システム、給与計算システムが必要になります。ただ、日本で使っている情報システムをそのまま導入しても絶対にうまくはいきません。言語が違い、業務のステップが違い、会計基準・給与体系も違う外国でのことですから当然です。当該国で既に使っている情報システムを流用するのか、パッケージソフトをうまく活用するのか、また最初からソフトウェアの開発をしていくのかをよく比較検討して、どれが効率的かを判断していくことが必要です。

5.まとめ
以上、海外で物流事業を運営する時のポイントを考察した通り、今後『国際力』を強化していくためには、進出を計画している当該国についてそれぞれのポイントをよく調査、検討していくことが重要となります。ただ、当該国のことを色々調査するに当たっては、日本人が一から始めるのではあまりに膨大な時間とコストがかかります。計画段階から物流事業についての豊かな経験を持った外国人をうまく活用して、そのノウハウを吸収していくことは有効な手段と考えます。

ロジ・ソリューションも『国際力』の強化に向けて、地道ではありますが様々な手段を使って日々努力しております。そのノウハウを生かした海外物流コンサルティング・サービスを提供していき、お客様のお役に立つことを目指しています。

(文責:内田)

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