物流の「見える化」作成の手順~使われないダッシュボードにならないために~

 最近、「可視化」、「見える化」という言葉をよく耳にします。現場の動きや数値を見える形にすることで、ボトルネックを特定しやすくなり、判断のスピードや精度が上がる。そんな期待から、多くの企業がBIツールやデータ連携に取り組みはじめています。

可視化における陥りやすい問題点

 可視化はやり方を間違えると、ただ「見えるだけ」で「So what(=だから何?)」な自己満足ツールになってしまうことがあります。
 たとえば、きれいなグラフや詳細な数値が並んだダッシュボードを作っても、
・使う人がいない
・何を見ればいいかわからない
・更新されずに放置される
 といったように、作ったものの活用されていないケースに心当たりはないでしょうか?こうした事態に陥る最大の原因は、「何のために可視化するのか」という目的が不明確なままダッシュボードの作成をスタートしてしまうことです。
 目的を明確にせず、ただやみくもに画面を生成すると、何が言いたいのかわからないアウトプットが完成することが少なくありません。

可視化にけるダッシュボード作成手順

 たとえば、配送の納期遵守率を高めたいという目的を設定した場合を例にあげます。その場合の作成の手順は次の4STEPです。

1. 目的を明確にする

「配送の納期遵守率を高め、顧客満足度を向上させたい」という目的を設定する

2. 問いを立てる

 「どのエリア・どの時間帯に遅延が多く発生しているのか?」と問いを立てる

3. KPIを設定する

 配送リードタイム、遅延件数、時間帯別の遅延率というKPIを設定する

4. 可視化して監視する

 図や時間帯ごとのヒートマップで遅延傾向を可視化して異常個所を発見する

 上記は、配送の納期遵守率を高めたいという目的を設定した場合の手順の一例です。
 たとえば倉庫の作業効率を改善したい場合は、「作業時間あたりの処理件数」や「人時生産性」を日次単位で把握し、生産性の平均値や目標値を大きく下回る箇所は徹底してその原因を掘り下げます。
 コスト構造を見直したい場合は「輸送費の構成内訳」や「拠点別・品目別コスト推移」を比較し、同じく対前年同月比や平均値とかけ離れていたらその原因を追及します。このような形で展開していけば、多種多様にKPIの運用が広がっていきます。

 また、異常値をいかにわかりやすく炙り出し、アクションにつなげられるかの設計も重要です。異常な状態を使用者に視覚的に知らせ気づきを与え、改善に繋げる。そのようなダッシュボードで現場を動かし改善が実施されることで、積極的に運用され、また新たに現場からの要望により縦軸横軸、更に重要なKPIの発見などが提案され、ブラッシュアップを繰り返し、洗練されたダッシュボードへと進化していきます。

<ダッシュボード(サンプル)>

最後に

 物流の可視化には、大きな可能性があります。しかし、「何を見たいか」ではなく、「何のために見るのか」を問い続けなければ、その真価は発揮されません。
 「見える化」から「動かす化」へ。
 作って満足するのではなく、使われることを前提に設計し、改善につながる運用まで含めてこそ、本当に意味のあるダッシュボードと言えます。
 まずは、目的の明確化からKPI設定と異常値の発見、それが実際に現場で使われ、改善につながっているかを、問い直すところから始めてみてはいかがでしょうか。

(文責:狭間)

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