3期制保管料金の単価を設定する際の注意点
547号を担当いたします仲才です。
倉庫の保管料金には様々な形態が有りますが、今回は一般的な料金体系である3期制保管料金の単価を設定する際の注意点についてご紹介させて頂きます。
まず、3期制保管料金は、積数×単価で算出されます。積数は前月残+10日残+20日残+総入荷量で算出され、保管料収入は10日毎の在庫量と入荷数量に比例する関係にあります。
積数とは、「ある時点での商品在庫数の合計と1ヶ月間の入荷総数の合計」であり、3期制では1ヶ月を10日毎に3分割し、その時点の商品在庫数を基に算出します。
そこで単価設定時のポイントは次の3点があげられます。
1.保管に掛かる総費用の把握
2.保管方法と倉庫レイアウトの作成
3.保管貨物の荷動き特性の把握
1.保管に掛かる総費用の把握
保管料売上で保管に掛かる費用を賄い利益を残す必要がある為、まず保管に掛かる総費用を把握する事が重要となります。把握する為には、倉庫運営に掛かる費用を保管、荷役のどちらかの費用に分類します。
一般的に保管に掛かる費用項目としては、倉庫賃借料、共益費、保管設備費用、情報システム費用等があります。
また、水道光熱費は荷役に掛かる費用ですが、定温倉庫など空調が必要な場合は、保管と荷役の費用に振り分ける必要があります。
その他、忘れ易い費用として事務所、休憩室等の賃借料や事務処理人員の人件費などがあり、これらの間接的な費用も忘れずに保管、荷役の費用に分類する事が大切です。
2.保管方法と倉庫レイアウトの作成
保管方法と倉庫レイアウトの作成は、倉庫内の保管能力を設定する為の大切な作業となります。
まず、倉庫を入出荷エリア、作業エリア、保管エリアに区分けし、次に保管方法(軽量棚保管、パレット直積保管、ネスティングラック保管等)を決定して、保管エリアのレイアウトに落とします。
レイアウトが出来れば貨物の保管可能数を把握できますが、注意すべき点は、この時点の保管能力はレイアウトの保管可能スペースに目いっぱい保管した状態であり、ここから運用ベースの水準を設定する必要があります。具体的には、パレット保管を例に挙げると、入荷時は20ケース/パレットの満載状態で保管されますが、出荷されると18ケース、15ケース・・・と保管数量が減少し、はい替え(注1)を行い積み増さない限り満載保管する事は出来ません。
1パレットの例を挙げても保管能力100%を維持した運用は困難であり、ましてや倉庫全体では不可能で、必ずロスを抱えた運用となります。これらは歯抜けロスや山欠けロスと言われ、貨物の荷姿、保管方法、保管レイアウト、入出荷の単位物量などにより必ず発生するものであり、一般的に何%と言う指標はありません。
しかしながら、単価を設定する為には何らかの前提条件を置いてロス率を設定する必要があります。前述の例の場合、20ケース/パレットが満載で、10ケースになったら他銘柄と混載保管にて20ケースにはい替えをするという様な運用を前提条件とすると、パレット上のケース数は10~20ケース、単純平均で15ケースとなり、保管ロス25%と設定することが出来ます。
(注1)保管効率や荷役効率を高めるために、在庫を新しいロケーションに並び替えることをはい替えという
3.保管貨物の荷動き特性の把握
最後のポイントは保管貨物の荷動き特性の把握になります。これは在庫回転率を把握する事であり、新規に受託する貨物の場合は、料金設定の為には不可欠な情報です。
在庫回転率は在庫量に対する1ヶ月間の入出荷量で算出され、在庫量と同数の入出荷量の場合、在庫回転率は100%であり、在庫量の2倍の入出荷量であれば200%となります。
保管単価の算出手順
この3つのポイントを押さえた後、次の手順で保管単価を算出します。
(A)坪当り保管費用から坪当たり目標売上の設定
坪当たり目標売上 =(保管総費用(ポイント1)+利益)÷ 保管エリアの面積(ポイント2)
(B)坪当たり運用ベースの保管能力
坪当たり運用ベースの保管能力 = 運用ベースの保管能力(ポイント2)÷ 保管エリアの面積(ポイント2)
(C)坪当たり積数の算出
坪当たり積数 = (B)×(3+在庫回転率(ポイント3))
尚、回転率は小数に置き換え50%なら0.5を代入します
(D)保管単価の算出
保管単価 = (A)÷(C)
最後に、この3つのポイント以外に考慮すべき点として、市場価格とのバランスがあります。倉庫が立地している地域や貨物の業界の単価水準から乖離した単価になっていないか、確認する必要がある事は言うまでも有りません。
今回ご紹介した内容は、新人社員の教育材料や顧客へ料金改定を申し入れる際の理論武装の参考として活用して頂ければ幸いです。
(文責:仲才 典久)
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