ダブル連結トラックの活用に向けて

ダブル連結トラックとは

544号を担当いたします外池(とのいけ)です。

 物流は国民生活・経済を支えるインフラとして欠かせない存在ですが、「物流の2024年問題」によって、ドライバー不足による輸送力低下が懸念されてきました。

 政府は問題の抜本的・総合的な対策を「物流革新に向けた政策パッケージ」として2023年6月に策定し、その中の物流効率化の一手段としてダブル連結トラックの導入促進を掲げました。

 本稿では、ダブル連結トラックの概要と現在の取り組みについて取り上げます。

1.ダブル連結トラックの概要

ダブル連結トラックとは、大型トラックの荷台の後ろにトレーラーの荷台部分をつなげることで、1台で通常の大型トラック2台分の輸送を可能にしたトラックのことです。2019年1月にトラックの全長規制が、それまで21mだったものが25mへと緩和され、以降導入が本格的に始まりました。現在も通行可能区間の拡充や駐車が可能な休憩施設等の整備が進められています。

2.ダブル連結トラック導入のメリット

輸送の効率化によるドライバー不足の解消

 ダブル連結トラックは、通常大型トラック2台分の貨物を輸送することが可能となるため、輸送効率は大きく向上します。国土交通省の調査によると、同じ重量を輸送する場合、通常の大型トラックに比べ ドライバー数が約5割削減されるという試算がされています。

また、これに伴って余裕を持った配車組が可能となり、長時間労働の減少や休憩時間拡充によるトラックドライバーの就業者数の増加も期待できます。

環境負荷低減

 輸送効率化により燃料消費が削減され、結果としてCO2排出量も削減できます。1,000トンの貨物1km輸送するのに必要な燃料とCO2排出量は、大型トラックに比べ4割削減が見込まれています。

 3.運用課題について

購入時コストが高く、運用に踏み切れない

 維持費はエンジンが1台分なので安くなる一方、車体費は大型トラック2台分です。高い車体費を維持費の削減で回収するためには長期運用が必要であるため、十分に活用できないことを懸念して導入を躊躇する企業もあります。

ダブル連結トラック優先駐車マス(以下、駐車スペース)、運行可能区間の拡大などインフラ整備の遅れ

 ダブル連結トラックは、高速道路の決められた区間しか通行できず、それ以外の道路の通行は最小限にしなければならないため、荷主に対しての要望に柔軟に対応できないのが実情です。また専用の駐車スペースが不足しており、サービスエリアで駐停車ができずドライバーの休憩が取りづらいことも問題となっています。

運転条件を満たすドライバーの確保

 ダブル連結トラックの運転には下記どちらかの運転条件を満たしている必要があります

  • 条件1:大型自動車免許及び牽引免許を5年以上保有、運輸業において5年以上の従事経験、2時間以上の訓練の受講していること
  • 条件2:優良な運転手(最低12時間の訓練かつ直近3年無事故・無違反)に限り、大型免許3年以上、牽引免許1年以上、大型自動車運転業務の直近3年以上

 この制限によって運送業未経験者では運転できず、育成にも時間とコストが掛かってしまうためドライバー確保が難しくなっています。

4.導入に向けた今後の取り組み

 現在ダブル連結トラック導入を支援するためのインフラ設備を進められており、2022年11月にダブル連結トラックの通行可能区間がこれまで2,050kmだったのが5,140kmへと拡充され、これにより高速道路の全長(約9,050km)の56%をカバーすることとなりました。また休憩施設は現状95か所、駐車スペースは237台分整備されており、さらに拡充路線でのダブル連結トラックの走行が想定される期間(2023年4月以降を想定)までに、追加で26か所の整備が予定されています。

(補図:ダブル連結トラックの駐車マス整備について)

 ダブル連結トラック導入を推進するためには、環境整備だけでなく国が主体となって購入時の補助金支給やドライバーの訓練プログラム計画などの支援が必要です。また実車を触って試すことができる場を設けることも、運送会社に興味を持ってもらう手段の一つかもしれません。

 今後更なる普及を目指すのであれば、上記で述べた車両販売以外の付随サービスの充実化が必要であり、それこそがダブル連結トラック運行数増加に繋がるのではないでしょうか。

(文責:外池 将也)

【参考文献】

国土交通省資料「ダブル連結トラックの導入状況及び利用促進策について」

国土交通省資料「ダブル連結トラックの対象路線を拡充」

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