2024年度には総物量の14%、2030年には34%の輸送能力が低下するという試算結果も
555号を担当いたします奈須です。
今般の物流を取り巻く環境は、ドライバー不足に加え、ドライバーの時間外労働時間の上限が規制されたことにより大きく変化し、物流の2024年問題としてメディア等でも取り上げられています。 何もしなければ2019年度と比較して、2024年度には総物量の14%、2030年には34%の輸送能力が低下するという試算結果も出ています。
物流に携わる荷主・納品先・物流事業者各社において、その対策に苦慮されているのではないでしょうか?
一例として、弊社が取引のある企業と取り組んでいる「物流の2024年問題」解決のための施策例を記載します。
このように2024年問題の対策を迫られる一方で、世界的情勢不安、地球温暖化、円安などによる物価の高騰の影響もあり、物流事業者から運賃のUP要請に対応せざる得ない企業も多かったと思われます。
それでは、今後運賃UP要請はどこまで進むのでしょうか?
人件費とそれ以外のコストを分けて考える必要が
今後の運賃UPを考える場合、ドライバーの人件費(賃金)と人件費以外の物価上昇による価格UP(燃料費、車両価格などの購入費)を別々に考える必要があります。
人件費以外の物価上昇については、その時々の社会情勢、気候、円相場などにより変化するため、今回はドライバー人件費について考えてみたいと思います。
ドライバーと全産業平均との所得・労働時間の比較
人件費UPを考える場合、ドライバーの賃金・労働時間がどうなるか?がキーになると考えます。
全日本トラック協会が、全産業とドライバーとの所得・労働時間を比較しております。
年間所得額と労働時間の比較
出典:全日本トラック協会 日本のトラック輸送産業-現状と課題-2023
ドライバーは全産業と比べ、所得は4%~12%低く、労働時間は19%~21%長いことがわかります。
よって、ドライバー不足を解消するためには、最低でも全産業平均の賃金・労働時間にして魅力ある業種にする必要があります。
人件費に関わる運賃UPの影響について
今回、年間所得、労働時間を同時に計る指数を出す為、1時間当りの賃金を算出しました。
全産業に比べ、ドライバーは1時間当りの賃金単価が21%~26%低い事が分かります。
従いまして、全産業平均並みの賃金・労働時間にするためには、少なくとも21%~26%UPしなければ追いつかない計算になります。
よって、運賃への影響は、輸送コストに占める人件費の割合が約50%程度であることを考えると、21%~26%UP×人件費構成比50%=10.5%~13.0%運賃UPしなければならない計算になります。
今年度料金改訂に応じた企業でも、人件費において全産業との格差を意識して料金改訂率を決定した企業はまれで、今後物流事業者から全産業並みの水準にもっていくための料金UP要請が確実にあると考えます。
例えば、2024年に料金改訂10%UP(人件費相当分5%+経費UP相当分5%)をしたのであれば、今後更に人件費相当分5.5%~8.0%を物流事業者側からUP要請されると思われます。
最後に、今回の試算は、あくまで業界単位での一般論での試算です。
実際には、荷主と物流事業者との取り決め運賃の水準や前回の料金改定からの期間、輸送区間、物量・ロット及び労働環境・条件により、対応も変わってきます。
又、今回使用した所得額、労働時間は毎年更新されることから、最新のデータを使用する必要があります。
運賃交渉に臨まれる際には、全産業との賃金及び労働時間の格差にも目を向けて検討して頂きたいと思います。
(文責:奈須)
参考文献
「物流の2024年問題」の影響について(公益社団法人全日本トラック協会)https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/sustainable_logistics/pdf/002_03_00.pdf
日本のトラック輸送産業 現状と課題2023
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