「物流危機(クライシス)」という言葉が頻繁にメディアに登場するようになり、ここ数年の間で物流に関する様々な課題を意識する各企業の経営者や担当者が増えたことと思います。
その中でも、「2024年問題」と言われている2年後適用のプロドライバーにおける時間外労働時間上限規制については、現在最も懸念することとして頭を抱えている方が多いのではないでしょうか。
そこで、そもそも「2024年問題」とは何か、どのような課題があるのか、荷主企業はどのように対処しなければいけないのか、大手物流企業とともに、約6万社に及ぶ中小の運送事業者はどんな対策を講じようとしているのかなど、今回を皮切りに数回に分けてテーマを設定し、検討していきたいと思います。
1回目は、「2024年問題」とは何か、を取り上げます。
「働き方改革関連法」と長時間労働の規制
2019年4月から、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(いわゆる「働き方改革関連法」)による改正後の労働基準法が順次施行されました。
「働き方改革」とは、働く方々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革です。その目的は、日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」、「働く方々のニーズの多様化」などの課題に対応するため、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境をつくり、働く人ひとりひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることとされています。
様々な法改正がある中で、長時間労働にも新たな規制が設けられました。その背景にあるのは、長時間労働は、健康の確保を困難にするとともに、仕事と家庭生活の両立を困難にし、少子化の原因、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参加を阻む原因ということがあります。長時間労働を是正することによって、ワーク・ライフ・バランスが改善し、女性や高齢者も仕事に就きやすくなり労働参加率の向上に結びつくことが期待されているのです。
自動車運転業務の猶予の期限が2024年
しかしながら、一律に改正法を施行することは困難であり、中小企業やいくつかの事業、業務においては適用の猶予が設定されました。
この中に、トラックドライバーなどの自動車運転業務があり、2024年3月までの5年の猶予が設定されています。
同年4月からは、自動車運転業務従事者の時間外労働時間の上限が、休日を含まず年 960 時間になります。これがどのような影響を与えるのか、公知情報を頼りにトラックドライバーの労働時間実態を調べてみても、本当の実態は中々把握できないのではないかと個人的には思っています。運送事業者の9割強は中小企業であり、水面下に深刻な課題を抱えた状態にあることが想像されるからです。
次号では、そのあたりも踏まえたトラックドライバーの労働時間の実態に触れたいと思います。
(文責:貞 勝利)
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