物流は武器になる2:物流管理部門におけるパラダイムシフト

前回は物流担当者のミッションとその変化の兆候について取り上げました。

今回はミッションの変化に関するポイントを押さえつつ、物流担当者に求められる新たな役割について紹介します。

これからの「物流コスト適正化」とは

前回の記事で物流コストの適正化が重要なミッションであり続けるという私見を述べました。2014年の日本ロジスティクスシステム協会による『ロジスティクスKPIとベンチマーキング調査報告書』では、「売上高物流コスト比率」を「非常に重視している」と回答した企業が74.7%に上っており、物流関連指標の中でコストが特に重視されていることが分かっています。また、コスト削減活動による企業全体への影響が比較的分かりやすいこともあって、多くの荷主企業内において物流担当者の評価にコスト関連の項目が組み込まれていることは想像に難くありません

これまで荷主にとっての物流コスト適正化とは、コスト削減を指すことがほとんどでしたが、物流環境の変化に伴い、コストアップの抑制という意味を指すケースが増えてきました。読者の皆さんもご存知の通り、物を届けるための仕組みを維持するために、燃料費や人件費の高騰に伴う単価の見直しをせざるを得ない状況になっています。

そういった状況下において、荷主企業内で物流担当者の活動を評価することが難しくなりつつあります。従前のように売上高物流費比率を軸にしてモニタリングし続けるのでは、物流担当者の評価は下降傾向となるでしょうし、物流管理部門の存在意義も問われ始めるのではないでしょうか。

こういった外部環境の変化(物流危機)を機会として、組織としてのミッションを見直す物流管理部門も増えてきています。

今後、物流環境の不確実性が増せば増すほど、社内での物流専門家の必要性も高まるのではないでしょうか。弊社が物流面のご支援をしているA社では物流担当者が営業部門のメンバーと同行して、顧客の物流面の課題発見を支援しています。また、自社物流資産(物流拠点、車両)の共同活用を提案するなど、物流の角度から顧客との新たな結びつきを創造しています。昨今の物流環境の変化は脅威のように見られがちですが、視点を変えると変革の機会とも捉えられます。

本稿では物流担当者のミッションが変化する背景についてポイントを押さえつつ、物流担当者に求められる新たな役割について紹介しました。次稿ではミッションの変更に伴って発生する新たな活動の要諦について紹介します。

【参考資料】
ロジスティクスKPIとベンチマーキング調査報告書』日本ロジスティクスシステム協会
『戦略的産業財マーケティング』笠原英一
「3PL事業におけるマーケティング2」『流通ネットワーキング』,329号,pp.52-56 野尻達郎

(文責:野尻 達郎)

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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第487号 2022年9月14日)