人手不足や物流2024年問題、多頻度小口配送の常態化を背景に、WMS(倉庫管理システム)やWCS(倉庫制御システム)などの物流システムの導入・刷新を検討する企業が増えています。一方で、多額の投資をしたにもかかわらず、現場で十分に活用されず、期待した効果につながらないケースもあります。
本稿では、これまでの事例から得た気づきも交えながら、現場との「ずれ」が生じる要因と、自社に合った選び方、導入後に定着させるポイントをご紹介します。
導入前に確認したいポイント
以前私が担当した事例では、JANコードがない商品や、入荷するまで内容が分からない商品を扱う物流現場がありました。また、作業者によって検品や入出荷作業にかかる時間や手順にも差が見られる場面がありました。
当時は商品マスターやバーコード整備に目が向きがちでしたが、振り返ると、それ以前に現場の作業実態を整理しておくべきだったと感じています。作業者によって手順が異なる状態では、管理側が想定する業務と現場の実態にずれが生じやすく、そのままシステム化を進めると、かえって現場の負担が増えることもあります。
また、JANコードがない商品やバーコード不良などの例外対応を十分に整理しないまま要件定義を進めると、運用が複雑になり、結果としてExcelや手書き運用が残る場合がありました。
そのため、システム導入前には商品マスターやバーコード整備だけでなく、業務そのものを見直し、標準化できる部分と例外として残す部分を整理しておくことが重要です。
選定時に確認したいポイント
システム選定では、機能の多さや個別開発のしやすさだけで判断するのではなく、自社の業務に合っているか、現場で無理なく使い続けられるか、将来の改修や保守に大きな負担がかからないかを確認することが大切です。
ある導入案件では、複数のベンダーを比較した結果、既存のパッケージでは業務要件に対応しきれないと判断され、フルスクラッチでWMSを構築することになりました。また、当初はハンディターミナルを使用していましたが、商品の形状や作業内容を踏まえ、タブレットタイプへ切り替えました。
このように、実際の現場に合わせて柔軟に判断することは大切です。一方で、最初から個別対応を前提にしすぎると、システムが複雑になり、導入後の改修や保守の負担が大きくなる可能性もあります。
そのため、選定時にはまず自社の課題をできるだけ具体的に把握し、出荷処理能力、歩行距離、商品探索時間など、改善したい内容を数値で確認しておくことが欠かせません。そのうえで、パッケージの標準機能でどこまで対応できるのか、業務側を標準機能に寄せられる部分はないのかを検討することが重要です。さらに、現場担当者にも選定段階から参加してもらい、実機で操作感を確認することも有効です。画面の分かりやすさや、手袋をしたままの操作性、商品の形状や作業内容との相性などを確認することで、現場で使い続けられるかどうかを見極めやすくなります。
導入後に定着させるポイント
システムは、導入して終わりではなく、現場で日常的に使われて初めて効果を発揮します。
導入後の運用では、現場の状況に合わせて定期的にシステムを見直していました。あわせて、作業時間の短縮や作業ミスの削減に向けた対策を継続し、必要に応じてロケーション変更や作業内容そのものの見直しも行っていました。
ただし、振り返ると、導入後に改修で対応することを前提にするのではなく、運用開始前の段階で改善要望の受け付け方や優先順位の付け方を決めておくべきでした。現場から出た要望をすべてそのまま反映すると、一見使いやすくなったように見えても、システム全体としては複雑になり、かえって分かりにくくなる場合があります。そのため、業務をできるだけシンプルに整え、システムの標準機能に合わせられる部分は合わせるという考え方も必要です。
また、導入後の効果を確認する際には、現場の感覚だけで判断するのではなく、作業時間やミス件数などのデータをもとに見ることが大切です。操作方法やルール変更を分かりやすく共有し、困ったときに相談できる窓口や確認方法を決めておくことで、現場が迷わず使える状態を保ちやすくなります。こうした改善の仕組みを継続することで、システムは単なる導入ツールではなく、現場の業務改善を支える仕組みとして定着していきます。
おわりに
どれほど高度なシステムであっても、それを使うのは「人」であり、稼働する場所は日々変化する「現場」です。真に価値のあるシステムとは、自社の課題を捉え、現場が迷わず使え、継続的な改善を支えるものです。
選定段階から現場に足を運び、現物の動きと実際のデータを確認することが、導入成功への近道です。
(文責:上林)
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