物流センターにおける労働力不足
物流業界においては、ドライバーをはじめ労働力不足が企業経営に大きな影響を与えています。2011年を境に日本の人口は減少に転じており、高齢化の進展に加えて世帯構造(共働きや単身の増加)が変わってきています。数年来続いている物流業界の労働力不足は賃金高騰にも表れており、物流業の平均時給は2019年8月までに91か月連続でアップしています。
雇い入れる賃金を上げても物流業界に労働者が集まらない状況の中で、物流センターにおける労働力不足も深刻化しています。物流事業者のみならず荷主サイドの製造業・小売業では、物流センターを新設もしくは移転する際には、いかに労働力を確保できるかを第一として計画を立てる場合が多くなってきています。
簡易的な物流センター最適立地シミュレーション
例えば「良好な交通アクセス」+「労働者確保」の両方を得るために新しい物流センターの建設を計画するとしましょう。新拠点もしくは統合拠点をどこに建てれば良いかは、まず配送拠点としてコストが最適なのかどうかをみることがロジ・ソリューションの場合は多いです。
日本ロジスティクス協会の「2016年度 物流コスト調査報告書」によると、輸送、保管、包装、荷役、物流管理のうち、配送コスト(支払物流費+自家物流費)の占める割合が55.7%と最も高くなっているというのが理由です。
配送コストが最小となる物流センターの最適立地は、一般的に需要地近隣を選定したほうが望ましく、その判断手法の一つとして重心法による拠点選定があります。重心法とは配送ネットワークにおける候補拠点のなかで、物量(t)×配送距離(km)の合計(Σ総トンキロ)が最小となる立地地点(配送エリアの物流重心という)を選定することで、配送コストが最小化するという考え方です。
重心法は重力モデルとも呼ばれ、筆者が欧州の物流事業者選定コンサルティングを実施した際には、3PL(Third Party Logistics)プロバイダー3社が、配送コストを考慮した提案拠点であることを、この重力モデルで示していました。
現在の拠点体制が最適なのか
例えば関東地区に物流センターがあり全国をカバーしていた場合、次に作る拠点は特別な要件がなければ関西に作るということが、なんとなく考えられることです。しかしながら、その立地はどこにすべきなのか、いつ作るべきなのか、そもそも2拠点が良いのかなどさまざまな検討をしなければなりません。さらに最適拠点だけでなく、既存の別施設や候補となる拠点を含め、より現実的な案を探ります。今後の事業展開をもとに物量の伸びをその試算に加えていく場合は、関東1拠点体制においてどの程度の物量になった時に新規の拠点を設置すべきかなどといったことも検討が必要です。
拠点数の検討において基本的な考え方は、拠点が多くなると配送費が低下するものの拠点のコストが増加するため、この二つの費用を合計すると最適な拠点数が導かれるというものです。まず配送コストや拠点コストを整理し、対象となる配送物量を決定します。この準備ができたら、拠点候補地を選定し、配送エリア割を先に行えば複数拠点の立地も表計算ソフトで計算できる重心法で試算可能です。
配送コスト以外に考慮すべきコスト
配送コストが最小となる拠点立地は重心法で出すことが可能ですが、その他のコストである製品保管コスト、荷役コストについても立地によって変化します。まず保管コストですが、拠点の賃料単価(坪単価であることが多い)の変化で計算すると簡易算出可能です。荷役コストは人件費に影響されるところが大きいため、都道府県単位にはなるが厚生労働省の賃金センサスを用いて、地域間の賃金レベルの違いを用います。
これら以外にも拠点集約時の在庫減について考慮しなければなりません。拠点集約・分散時に在庫量(正確には安全在庫量)は変動すると言われており、平方根の法則に従うとされています。
(文責:釜屋 大和)
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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第416号 2019年10月16日)