プロジェクトで起こりがちな課題
大規模なプロジェクトでは、タスク自体は明確に定義されていても「誰が担当するのか」「最終的な責任は誰が負うのか」が曖昧になることがあります。 このような状況では、成果物の品質低下、タスクの放置や未完了、問題発生時の対応遅れによる進行の停滞などのリスクは生じやすくなります。
特に関係者が多いプロジェクトでは、責任の不明確さが繰り返し発生しやすく、全体の効率を損なう要因となります。こうした課題を防ぐ有効な手法の一つが RACI(レイシ/レイシー)フレームワーク です。
RACIとは?
RACIとは、プロジェクトにおける各メンバーの役割や責任の所在を明確にするフレームワークのことで、以下の4つの役割の頭文字を取ったものです。
- R: Responsible(実行責任者)
実際にタスクを遂行し成果物を作成する人。主担当は原則1名に絞ることで責任の混乱を防ぎます。 - A: Accountable(最終責任者)
成果物に対して最終的な責任を負う人。目的達成度に責任を持ち、原則1名に限定。実行責任者とは別に設定することで客観性を保ちます。 - C: Consulted(協業先・相談相手)
専門的知見を提供し、意思決定前に意見を求められる人。成果物に対し直接の責任は負わないものの、フィードバックや助言を通じてプロジェクトの質を高めます。 - I: Informed(報告先)
意思決定には関与しないが、情報共有を受ける人。ステークホルダーやプロジェクトオーナーが該当し、最新情報を正確に把握する役割を担います。
このフレームワークは1970年代に米国のコンサルタントや研究者の間で広まりました。タスクごとに誰が「実行」し、誰が「最終責任」を持ち、誰に「相談」し、誰に「報告」すべきかを明確にすることで、チーム内の混乱を防ぎ、円滑なコミュニケーションとプロジェクト推進を可能にします。 特定の提唱者がいるわけではなく、プロジェクトマネジメントの実務から自然発生的に定着したもので、現在ではPMBOKなどの国際的な標準にも組み込まれ、世界中で活用されています。
RACIを導入するメリット
RACIを導入すると、以下のような効果が期待できます。
- 責任の所在が明確になる
誰がタスクを実行し、誰が最終判断を下すのかが一目で分かります。 - 迅速な対応が可能になる
問題が発生した際に、迷うことなく適切な担当者が動けるため、対応が遅れることを防げます。 - 重複作業や責任の押し付け合いを防ぐ
複数人が同じ対応をしてしまう無駄をなくし、効率的に進められます。 - メンバーの安心感につながる
自分の役割や責任範囲が明確になることで、不要な負担を感じずに業務に集中できます。
物流プロジェクトの活用例
事例として新規荷主の保管および入出庫業務の立ち上げを例にRACIチャートの一例を示します。

この表を見れば、誰が保管レイアウトの最終判断を担うのかなど、倉庫の立上げなどでよくみられる責任所在の曖昧化を防ぐことができます。
このように、RACIチャートを作成することでタスクごとに「誰が何をするのか」「誰が責任を負うのか」が明確になり、責任の押し付け合いやタスクの放置を防ぐことができ、プロジェクト全体の透明性が高まります。
さらに情報システム構築のようにタスクが細分化される場合、要件定義・開発・単体テスト・総合テスト・UAT(User Acceptance Test,受入テスト)など、各工程にRACIを適用することで、より細かい責任分担が可能になります。
一方で、RACIチャートはタスクごとの役割分担には有効ですが、関係者全体の連携を示すのは難しく、チーム内の情報共有不足につながる可能性があります。そのため、補足資料やWBS(Work Breakdown Structure、作業分解構成図)など他の管理ツールと併用して活用することが重要です。
(文責:伊藤 和城)
まとめ
RACIはシンプルでありながら強力な役割分担ツールです。適切に導入すれば、プロジェクトの効率性と透明性を大幅に向上させることができます。
責任の所在を明確にし、意思決定をスムーズにし、安心して発言できる環境をつくるために、ぜひ物流のプロジェクトや日常業務にも取り入れてみてください。
参考資料・出典
“誰がやるの?” 問題を秒で解決するRACIチャート活用法
ITコンサルが解説!RACIマトリックスの利用方法|noRi
RACIチャートとは何か?責任と役割の整理の仕方を解説 | Promapedia(プロマペディア)
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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第591号 2026年1月14日)
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