KPIとは
皆様はKPI(Key Performance Indicator)という言葉はご存じでしょうか。KPIとは「重要業績評価指標」の略で、企業や組織が設定した目標(ゴール)に対して、その進捗状況や達成度を測定・評価するために使用されます。担当する業務によってはあまり馴染みがない言葉かもしれませんが、業務プロセスの改善活動において、しばしばKPIという単語が登場します。一般的には業務の生産性向上や製品品質向上活動など、さまざまな場面で活用されます。
私自身も庫内作業の人員削減を検討する際、1出荷あたりの生産性を物流KPIとして設定し継続して測定しました。その結果、曜日別物量と生産性の相関関係が「見える化」され、人員削減に繋げることに成功しました。本稿では業務改善に携わる方向けに、KPI管理の概要とKPIを活用した改善活動について説明します。
KPIの設定について
物流業界においては、倉庫作業の生産性や物流品質向上のための指標としてKPIがよく活用されます。倉庫業務を例に挙げると、「ピッキング生産性を上げたい」という目標を設定した場合、「1件あたりのピッキング時間」や「時間あたりピッキング件数」といった具体的な数値目標がKPIとなります。このKPIを測定して継続管理することで改善効果の「見える化」ができるため、「管理の仕組み」であると同時に「改善ツール」でもあるとも言えます。あくまで目標達成状況を可視化する方法の一つがKPI管理なので、間違ってもKPIを設定することが目的ではないことに留意しなければなりません。
KPIを活用した改善活動について
改善活動におけるKPI管理の手順について説明します。
1: 目標値の設定
現状を把握し、問題を抽出して目標を設定します。まずは原因となる業務プロセスがどこにあるか特定し、改善することによってどの程度効果が見込めるかを検証します。現状の実績値に努力値(改善効果)を加えて目標値とするのが一般的です。
2: KPI項目の設定と測定
目標の達成度合いを定量的な数値で把握できる項目として設定します。複雑な条件は設けず、できるだけ簡単に算出可能な指標が望ましいです。また測定後は図やグラフで表現することで日々の変化を可視化することができ、一目見て理解しやすい資料となります。
3: 改善策の策定と実行
問題が発生している原因を特定して対策を実行します。対策後も継続的にKPIを管理し、データ値の揺らぎや他の物流KPIとの相関性を観察することで、改善案の立案と実行をし続けることが重要です。
このように一般的な流れを書きましたが、目標との整合性を持たせることがKPI管理において重要です。また過剰に多くのKPIを設定するのではなく、重要な指標に絞って最低限度に留めるのが望ましいです。
改善活動のポイント
以下に物流KPI活用のポイントを説明します。
A: 現場作業を理解する
KPIを活用するには、先ず現場の業務フローを理解することが必要です。倉庫内作業や配送プロセスを深く理解することで、適切なKPIが設定できます。
B: 小さな改善から始める
大きな改善よりも、日々の業務の中で小さな改善を意識しましょう。「出荷生産性を向上させる」という抽象的な項目よりも、「ピッキング時のロケーションへの移動時間を減らす」など具体的な項目の方が、設定すべき物流KPIも明確になり、改善も行いやすいです。
C: 他社の物流KPIは参考にならない
同じ業界でも使用しているシステムや倉庫管理の方法、配送ルートなど前提条件や環境が異なるため、同じKPIを設定しても比較が難しいのが実情です。自部門の業務プロセスに合わせた物流KPIを設定することが重要です。
D: 積極的にコミュニケーションを取る
「分かったつもり」「聞いたつもり」で業務改善を進めるより、上司や先輩に確認して理解することで手戻りも少なくなります。また改善活動は現場作業員の協力が必要不可欠です。日頃から積極的に発言しコミュニケーションを取ることを心がけることが大事です。
KPIは単なる指標ではなく、物流をより良くするための重要な指標です。目標達成や業務改善と聞くと難しく感じるかもしれませんが、まずは適切なKPIを設定することから始めてみてはいかがでしょうか。
(文責:外池 将也)
(参考)
・日本ロジスティクスシステム協会「ロジスティクス評価指標の概要」
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