2025年の崖が目前に
539号を担当いたします渡辺です。
経済産業省がDX(デジタルトランスフォーメーション)レポートを2018年に発表してから早くも6年が経ち、レポートの中で言及のあった「2025年の崖」(情報システムの複雑化、ブラックボックス化と保守運用の担い手不足の進行による経済損失の可能性)の時期が目前に迫ってきました。
既存システムのレガシー化やブラックボックス化による経済損失の懸念は、物流業界においても顕在化しており、ここ数年でDX推進の声を非常に多く耳にするようになりました。そのような状況下で、物流会社に勤められる方で、WMS(倉庫管理システム)やTMS(配送管理システム)といった物流システムの刷新検討や新システムの導入検討に携わる方も多いかと思います。
システム導入の中で、システム会社から納品されたシステムの確認をする際に、どのような観点でどういった内容を確認すればいいのか、迷われた経験のある方も多いのではないでしょうか? 今回は現場担当者目線で、システムテストの際のチェックポイントについてご紹介したいと思います。
UATとは
そもそもシステム導入の検討は、要件定義→設計→開発→ユニットテスト→システム統合テスト→ユーザー受入テスト(User Acceptance Test以下UATと略)→導入という流れが一般的です。設計~システム統合テストまではシステム会社が主体で行い、実際の業務で使うユーザーが確認を行うのがUATです。
UATの目的は大きく2点あります。
1.要件仕様通りにシステム機能が正常に作動し、無理なく業務が遂行できるか確認する
2.各種テスト観点に基づきテストを実施、結果を確認することで稼働トラブルのリスクを極力なくす
これらの目的を達成するためには、テストシナリオ毎に作業工程とチェックポイントを明確にしたチェックシートの準備とチェックシートに基づいたテスト実施、結果確認が重要になります。
チェックシートに設ける結果確認のポイントは大きく次の3つがあります。
- 業務処理…業務が無理なく遂行できるか
- 整合性…前工程、後工程をつなげた場合に後工程の作業が問題なくできるか
- 視認性…画面、帳票の見た目の確認
基本的には、作業工程ごとにA~Cの観点とそれに基づくチェック内容を記載しておき、テスト実施時にOK/NGを記入していきます。これにより観点毎のOK/NGの数を定量的に捉え、NGが発生した場合はその不具合内容を記録に残します。
3つのチェックポイントの中で最も大事なのはA.業務処理です。システムが問題なく動くかだけでなく、実際の業務処理量も加味した場合に、現場作業がまわるのか確認することが必要です。
B.整合性は、前工程でインプットした情報で必要な画面表示、出力帳票の必要項目が印字されているか、また出力した帳票を使って作業ができるかを確認します。例えば、事務所で出力したピッキングリストをもとに現場で作業する場合に、必要情報(格納場所や商品情報)は印字されているかなどです。
C.視認性は、画面や帳票項目の文字の大きさ、探しやすさを確認します。ただ単に文字を大きくするだけでなく、白黒反転するなど表現の変更も有効です。
冒頭に述べたDX推進の流れはこれからも続き、将来的には物流システム導入に立ち会う機会も増えていく可能性があります。皆さんも物流システム導入のUATの際、確認する内容に迷った場合は、上記の内容を参考にされてはいかがでしょうか。
(文責:渡辺 隆太郎)
(参考)
DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~(本文)
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