前回に続き、2024年問題を考えます。
トラックドライバーの付帯業務
トラックドライバーの業務というと、運転業務(運送)以外にどのようなことを想像するでしょうか?
- 納品先でフォークリフトを使っての商品の取卸し、パレットへの積み替え
- 商品を取卸し、検品後に所定の場所へ商品を運搬
- 所定場所で在庫されている商品を一度取り出し、運搬してきた商品を所定場所の奥に格納して、一度取り出した商品を手前に格納する(先入れ先出し)
- 過去に納品した商品の空きパレットをフォークリフトで収集し、トラックへ積み込む
こうした光景をよくみかけるという人がいるかもしれません。
運転業務以外のこれらの行為を付帯作業といいますが、荷主との業務委託契約で明文化されていることは稀です。つまり、無償のサービスになっていることが多いというのが実態です。さらに、出荷先での荷待ちの待機や、納品先での荷下ろし順番待ちの待機もあり、こうした付帯作業や待機は、ドライバーの長時間労働を発生させる大きな要因になっています。
また、長時間労働だけでなく、トラックの積み込み作業や荷下ろし作業においては、貨物を手積み手下ろしすることも多く、こうした重労働の環境整備がなかなか進まない実態も見過ごせません。
トラックドライバーは全業種と比較して2割も労働時間が長い
グラフ(図1)は、トラックドライバーの年間労働時間の推移を表したものですが、全業種と比較して約2割程度、長時間労働になっていることが分かります。
それでは、トラックドライバーが、その長時間労働に見合った所得を得られているのかというと、そうではありません。グラフ(図2)でわかる通り、トラックドライバーの年間所得は、全業種と比較して約1~2割程度安いのが実態です。
この長時間労働と低所得の仕事に従事したいという人、特に若年者がどれだけいるでしょうか?直近(2022年3月)の全業種における有効求人倍率は1.22倍ですが、自動車運転の職業については2.24倍と高く、ドライバー不足を反映していると言わざるを得ません。
<図1>
<図2>
2024年問題に触れるうえで、その背景としてまず知っておきたいのは、これらの厳しい現状です。社会全体としては、高齢者が活躍できる職場や、ジェンダー平等を踏まえた女性のさらなる活躍に期待されていますが、ことトラックドライバーの世界では、こうした方々をすんなり受け入れる環境は整備されていません。
次号では、これらも含め、運送業界のビジネス構造が抱える問題に触れながら、さらに2024年問題の深刻さを浮き彫りにしたいと思います。
(文責:貞 勝利)
(参考)
厚生労働省「賃金構造統計調査」
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和4年3月分及び令和3年度分)」
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