総務省が10月20日に発表した人口統計では、日本の人口は1億2963万人で、昨年同月対比より18万人減少との結果が公表されました。
人口の減少とともに誰もが気になるのは、生産年齢人口の減少と、高齢者人口の増加というアンバランスです。「2025年問題」と言われる団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)になる頃には、高齢者(65歳以上)の人口比率は30.3%になり、高齢者を支える社会構造が大きく変わることが予測されます。年金、医療、介護などの社会保障給付は、既に年間110兆円を超える水準に達しており、社会保障制度自体の持続可能性も問われています。
2015年6月30日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2015(骨太の方針2015)では、社会保障の支出について、“民間の知恵の活用等を通じ、生産性を向上することにより、公共サービス分野を「成長の新たなエンジン」に育て、経済再生を確かなものとする”とされ、公共サービス分野の改革としては、次のような事項が例示されています。
・企業等が医療機関・介護事業者、保険者、保育事業者等と連携して新たなサービスの提供を拡大することを促進する。
・医療、介護と一体的に提供することが効果的な健康サービスや在宅医療・介護拡大に対応した高齢者向け住宅、移送サービスなどのニーズに応じた新たなサービスの供給を拡大する。
さらに、介護保険制度改革については、その根幹をなす考え方として、高齢者の尊厳保持と自立生活の支援という目的のもと、可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービスを提供することのできる「地域包括ケアシステム」の構築が最大の課題であるとされています。
しかし、これらの政策や方針を耳にしても、私たちの住む地域の実情はまだまだそういった包括的な連携が進んでおらず、実際に家族に介護者を抱える方には違和感を持たれる方も多いのではないでしょうか。かくいう私も、実父が要介護5レベルの被介護者であり、様々な公共サービスや介護施設、病院等の手配には四苦八苦しています。私のように親族が身近にいて関われる状態にあるのはまだましなほうで、老老介護になっている夫婦や、独居老人の方々を想像すると胸が締め付けられます。
こうした多くの高齢者が仮に在宅で生活できるようになり、地域連携でケアが進んだとして、その中で重要な課題になるのが生活物資や介護商品等の調達です。インターネットによる通販ビジネスがすっかり定着しましたが、便利な反面、宅配で届く商品を玄関先で受け取ろうと移動した際に、家の中で転倒する高齢者が増えているそうです。現在の高齢者には、未だインターネットに触れる機会が少ない方が多いと思われますが、先述の2025年辺りには、より多くの高齢者が利用することも想定されます。
在宅高齢者のもとに、生活で必要なものを、誰が安全に届けるのか、我々物流関連事業者には新たなテーマをつきつけられているような気がします。
(文責:貞 勝利)
【参考資料】
『図解入門業界研究 最新介護ビジネスの動向とカラクリがよ~くわかる 第2版』(秀和システム出版 2016年3月31日)
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(ロジ・ソリューション(株) メールマガジン/ばんばん通信第342号 2016年11月9日)