今回は、現場の業務効率化にすぐお役立ていただける、身近な物流のデジタルトランスフォーメーション(DX)の実例をご紹介いたします。
日々の業務を圧迫する「膨大なデータの処理業務」
物流現場におけるデータ処理業務の一例として、ここでは次のようなケースを想定してみたいと思います。 「荷主様から送付された基幹システムの在庫データと、自社の倉庫管理システムの在庫数にズレがないかを、Excelで突き合わせて確認する」という作業です。数万行に及ぶ重たいデータファイルを開き、VLOOKUP関数をコピーした途端、画面が真っ白になってフリーズし、応答なしのカーソルが回り続ける……。実務でこの作業に直接携わる方はもちろん、管理の立場から現場の負担を懸念されている方も、特に出荷がピークを迎える時期などは、少しでも早く終わらせたい業務のひとつではないでしょうか。
「生成AI」を優秀なアシスタントにして「Python」で解決する
フリーズしてしまう重たい突き合わせ作業は、「Python(パイソン)」という無料のプログラミング言語を使えば、数十万行のデータであっても数秒で処理が完了します。
「便利そうだけど、プログラミングをイチから覚えるのはハードルが高い」と感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、ご安心ください。現在はプログラムのコードをゼロから自力で書く必要はありません。Microsoft CopilotやGoogle Geminiといった「生成AI」を活用することで、誰でも簡単にコードを作成することができます。
【実践編】コピペで使えるAIへの依頼文(プロンプト)
AIへ指示を出す際は、単に「コードを書いて」と依頼するのではなく、自身のスキルレベルや、「実行環境の準備からファイルのダウンロード方法」、そして物流データ特有の条件を含めることが、現場導入を成功させる秘訣です。
ご参考までに、そのままコピーしてAIに入力いただける指示文の例を記載いたします。
「私はプログラミング未経験の物流事務担当です。2つのExcelファイル(※テスト用のダミーデータ)の在庫数を『商品コード』で突き合わせ、差異があるデータだけを新しいExcelに出力するPythonコードを作成してください。
条件
- PCにPythonをインストールできないため、ブラウザで動く無料の『Google Colaboratory』を使用します。
- Colaboratoryの立ち上げ方、Excelファイルのアップロード方法、コードの実行手順、そして最後に出力されたExcelファイルをPCにダウンロードする方法を、専門用語を使わずに順を追って教えてください。
- 物流の商品コードは『00123』のように先頭が『0』で始まることが多いため、0が消えないように文字列として読み込む処理を入れてください。
- 片方のデータにしか存在しない商品があった場合、エラーにならないよう欠損値を『0』として扱う処理を入れてください。」
AIが作成してくれるコードのイメージと、物流データのポイント
上記の指示を出すと、AIはツールの立ち上げ手順とともに、以下のようなコードを生成してくれます。(※今回のコード生成には「Google Gemini Pro」を使用しています。)一見難しそうに見えますが、意味を完全に理解する必要はありません。画面にコピーして貼り付け、実行ボタンを押すだけで動きます。
【Pythonコード:在庫差異の自動抽出】
import pandas as pd
# 1. Excelデータを読み込む(商品コードの「ゼロ落ち」を防ぐため文字列として指定)
warehouse_df = pd.read_excel(‘warehouse_inventory.xlsx’, dtype={‘商品コード’: str})
client_df = pd.read_excel(‘client_inventory.xlsx’, dtype={‘商品コード’: str})
# 2. 「商品コード」を基準にして両方のデータを結合する
merged_df = pd.merge(warehouse_df, client_df, on=’商品コード’, how=’outer’, suffixes=(‘_倉庫’, ‘_荷主’))
# 3. 片方にしかないデータ(空欄)を「0」に変換して比較可能にする
merged_df[[‘在庫数_倉庫’, ‘在庫数_荷主’]] = merged_df[[‘在庫数_倉庫’, ‘在庫数_荷主’]].fillna(0)
# 4. 在庫数に「差異」がある行だけを抽出する
diff_df = merged_df[merged_df[‘在庫数_倉庫’] != merged_df[‘在庫数_荷主’]]
# 5. 差異リストを新しいExcelファイルとして出力する
diff_df.to_excel(‘inventory_diff_report.xlsx’, index=False)
物流データで特につまずきやすい「商品コードのゼロ落ち(00123が123になってしまう現象)」や「片方にしかない商品のエラー」も、AIへの指示に含めておくことで事前に対策された実務に耐えうるコードが完成します。手作業では見落としがちな膨大なデータの差異チェックも、一瞬で正確に処理することが可能です。
おわりに
プログラミング未経験者であっても、生成AIを活用することで、Pythonという強力なツールを即座に実務に取り入れることができます。Excelのフリーズに悩まされる時間を削減し、浮いた時間をより付加価値の高い業務や、庫内の改善活動に充ててみてはいかがでしょうか。
物流効率化法の改正などにより、データの可視化や定量分析が求められる中で、こうしたデータ処理の自動化は、すでに一部の現場では当たり前になりつつあります。まずは一度、AIに話しかけるところから始めてみてください。
※【重要】セキュリティおよび免責事項に関するご注意
無料のクラウド環境(Google Colaboratoryなど)を利用して本手順を試す際は、実際の荷主様のデータや機密情報を含んだファイルをそのままアップロードしないでください。必ず自社の情報セキュリティ規定に従うか、商品名や企業名などを伏せた「テスト用のダミーデータ」を使用して、安全に動作確認を行ってください。
また、本記事に掲載されたプログラムコードの実行およびその結果については、ご利用になる皆様の責任において行われるものとし、当社(ロジ・ソリューション株式会社)はその内容の正確性や安全性、および実行によって生じた損害等について一切の責任を負いかねます。あらかじめご了承ください。
(文責:高山 健)
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