先日、あるメーカーの担当者から、「最近、受注システムを刷新したが、工数削減の効果が説明できない」という相談を受けました。
この状況から浮かび上がる問題点は、業務工数の現状把握と効果測定が十分にできていないことです。また、上層部と現場担当者の間で期待値にギャップが生じていることも問題です。
この問題を踏まえ、本稿では効果測定の具体的な進め方を以下に整理します。
1.現状把握、問題点・課題の抽出(As-Is分析)
効果を測定するためには、導入前の実態を記録しておくことが必須です。実務担当者へのヒアリングを行い、業務フロー図などで一連の流れをつかみ、必要に応じてタイムスタディ(作業ごとの時間計測)やワークサンプリング(一定間隔で作業内容を記録)を行います。現状の各工程・作業ごとの工数(時間・人数)を記録し、定量的に実態を把握します。現状データがないというケースも多いですが、丁寧に現状を記録するほど効果測定の精度が向上します。
また、現状で時間のかかっている作業や改善したい点などの問題点や課題、現場のニーズなども明確にしておきます。
2.目的の明確化と目標設定
新システムを導入する目的は、業務効率の向上、入力処理ミス低減、システム老朽化対応、業務標準化、他システムとの連携などさまざまありますが、特に重視する点を明確にします。目的が曖昧なままでは、導入後の効果を正しく評価できず現状の課題に合った対策を選べないため、システム導入が本来の目的や問題解決につながらない恐れがあります。
現状把握から課題を踏まえ「何をどこまで改善したいか」「どの程度工数が減る見込みか」など数値目標を事前に関係者間で共有・合意し、期待とのギャップを防ぎます。
3.導入後の想定フロー(To-Be分析)
新システム導入後の想定される業務フローを作成し、予測される工数を現状と同様に計測します。必要に応じて、システムのデモ環境でのテストや一部部署でのPoC(概念実証)などを実施し、実際の操作感や流れを確認することも有効です。また、現状(As-Is)との比較を行い、作業工程数や手間の違いを可視化し、「手入力作業が削減」「二重チェックが不要」など、具体的な変化ポイントを洗い出します。
4.効果測定
導入前後の各変化ポイントにおける処理時間の短縮やエラー件数・ミス件数の削減、また処理件数・処理量の増加などを集計し、それらの変化を基に効果額を算定します。
例えば、受注システム導入の場合は、各作業工程の処理時間やミス件数の変化を測定し、それらの改善分を金額換算して効果を評価します。
以下に、受注システム導入を例に具体的な効果測定方法を示します。
効果測定例)
4-1.現状のデータ
・月間受注件数:1,000件/月
・1件あたり入力時間:10分
・1件あたり二重チェック時間:3分
・月間入力ミス件数:20件/月
・入力ミス1件あたりの訂正作業時間:15分
・顧客問い合わせ件数:70件/月
・問合せ対応時間:1件あたり5分
4-2.変化ポイント
・入力時間削減:手入力からWeb受注(EDI、OCRなど)による自動化により1件当たり入力時間10分→3分
・二重チェックの削減:商品情報を他システムから連携し自動照合することにより二重チェック3分→0.5分
・入力ミスの削減:不正入力の自動アラート機能追加により月間入力ミス件数20件→5件
・顧客問合せ対応の削減:顧客専用webサイトで受注状況をリアルタイム表示により顧客問合せ件数70件→20件
4-3.変化点ごとの削減時間

4-4.効果額
仮に人件費を2,500円/時間とすると、5.0百万円/年が年間総効果額となります。

5.効果検証
効果測定の結果をもとに、目標通りの効果が得られているか分析・評価します。期待した効果が得られていなければ、問題点・課題を整理し、運用の見直しやシステム修正などの改善策を検討・実行します。改善策を実施した後も、定期的に効果を確認し改善を継続的に行うことが重要です。
導入後になって現状のデータが残っていない場合、定性的な評価やアンケート( 「以前は1件あたり何分かかっていた」「どの工程が手間だった」など)を行い、業務マニュアルやシステム手順書の確認、同業他社事例の参考値の活用などで補足するしかありません。ただし、担当者の「以前より早くなった」「楽になった」という感覚だけでは、客観的な根拠として弱いため、説得性に欠けてしまいます。導入前後の数値比較により、明確な改善効果を示すことで社内の納得や次の改善につながります。システム導入の際は必ず効果測定を意識して準備を行い、導入後も定期的な検証と改善を継続することが、システム導入の本来の価値を最大限発揮するために欠かせません。
(文責:松本)
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